2012.01.29 (Sun)
シュレルズを聴く

その昔、シュレルズという黒人の女性コーラス・グループがいた。いたと書いたが今も歌っているかもしれないが詳細は知らない。1960年代前半に最も活躍したグループだから現在だとかなりのお歳である。でも小生はこのシュレルズが歌ってヒットした曲をリアルタイムで聴いていたというのでもない。それなら何故、シュレルズを今回とりあげたかというと、ビートルズが彼女等の曲をカバーしていたからである。
1966年だったろうか。ビートルズの来日を記念して発売されたアルバムがあって、そのアルバムを高校生の姉が借りてきた。今は手元にないから忘れたが『ステレオ! これがビートルズVol.1』というタイトルのアルバムだったと思う。それは日本で発売されなかったビートルズのデビュー・アルバムの日本版のようなもので、収録曲の中に『Boys』『Baby It’s You』が入っていた。それでこの2曲のオリジナルが共にシュレルズであったということを知るのである。なので当然、小生はシュレルズの曲がヒットを連発していた当時は知るはずもない。しかし、初期のビートルズは他人の曲を頻繁にカバーしていたので、そのオリジナルが矢鱈気になるというのでもあった。そういう理由で小生はシュレルズを後に聴くようになったのである。
シュレルズというのは1958年にアメリカのニュージャージーで結成された黒人の4人で組織されたコーラス・グループである。メンバーはシャーリー・オーエンス、ビバリー・リー、ドリス・ケナー、エディ・ミッキ・ハリス。彼女達は高校の同級生で、当初はアマチュアとして活動していたが、あるきっかけからレコード・デビューすることとなる。こうしてポケロスという名で活動していたアマチュアのグループがザ・シュレルズと名を変えてプロ・デビューするのだった。デビューから2年間はこれといったヒットに恵まれなかったが、1960年にキャロル・キング、ジェリー・ゴフィンのコンビによる曲『Will You Love Me Tomorrow』が全米1位に輝くのであった。この曲はシュレルズ最大のヒット曲で彼女達の代表曲となり、その後にベン・E・キングやデイブ・メイスン等がカバーしているし、作曲者のキャロル・キングも自身のアルバム『つづれおり』の中に入れている。そして、この曲のシングル盤B面に収められていたのが『Boys』だったのである。
それから2年後、シュレルズは『Baby It’s You』をヒットさせるのであるが、この曲をビートルズはデビュー・アルバムである『プリーズ・プリーズ・ミー』に前述の『Boys』と共に収録しているのであった。こうして小生はビートルズを通してこれらの曲を知ることとなったのであるが、シュレルズがその後にヒット曲を出したということはほとんどなかったように思う。つまりシュレルズの全盛期は明らかに1960年代前半であったといえよう。でもヒット曲の数こそ少ないとはいえ、その後、多くのミュージシャンが彼女達の曲をカバーしていることからして、与えた影響は多大なものであるといえよう。シュレルズは元々ゴスペルやリズム&ブルースといったところをルーツに持つだけあって、色々な要素を含んだ音楽性に後発のミュージシャンが彼女達の織りなすサウンドに聴き耳を立てたことだろう。それだけにシュレルズは長い商業委音楽の歴史において、特筆すべきグループであることは当然である。残念ながら、その後はヒット曲とも縁がなくなり、70年代以降となるとその名前さえも忘れられてしまったかのような感じがするものの1996年シュレルズは見事にロックの殿堂入りを果たしている。
『Will You Love Me Tomorrow』を歌うシュレルズ(1964年)
『Baby It's You』を歌うシュレルズ(動画なし)
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