2017.02.18 (Sat)
サンタナのアルバム『アブラクサス』を聴く

このアルバムは日本では『天の守護神』というタイトルで発売された。1970年のことである。ラテン・ロック・グループのサンタナが出した二枚目のアルバムである。そもそも結成は1966年と古く当初は知名度もなかった。そのときはサンタナ・ブルース・バンドと称していた。その名の通りリーダーのカルロス・サンタナが中心メンバーである。その後、1969年にサンタンと改名し有名なウッドストックに出演し名が知れ渡っていき、翌年に出された当アルバムが大ヒットした。何とビルボード・チャートのアルバム部門で第1位を獲得したのである。この中に収録されている『ブラック・マジック・ウーマン』『オジェ・コモ・バ』がシングルヒットし日本でも有名なバンドとなった。そして翌年には早くも来日したものだ。当時、海外のロックバンドの来日が多く、人気が出るとすぐに来日していたような気がするが、サンタナのようなラテン・ロックというのも珍しく、マニアもかなりいたように思う。ハード・ロックが主流で、ブラス・ロック、ブルース・ロック、カントリー・ロック、フォーク・ロック、そしてプログレッシヴ・ロックとか色々あったと思う。そんな中でサンタナもラテン・ロックの先駆けであろう。ただサンタナの音楽の特色はインストゥルメンタルが多いと言うこと。当アルバムは9曲収録されているが何と5曲がインストゥルメンタル曲。結局、ボーカルの入っている2曲目、3曲目がシングルとして売りだされ何れもヒットしたのであった。
当時のメンバーは6人でリーダーでギター、ヴォーカルのカルロス・サンタナ。キーボード、リード・ヴォーカルのクレッグ・ローリー。ベースのデイヴ・ブラウン。ドラムスのマイケル・シュリーヴ。そこへホセ・チェピート、マイケル・カラベロと2人のパーカッションが加わっている。アルバムを聴けば判ると思うが絶えずパーカッションが響いている気がするのはそのためだ。実にラテン風バンドであり音色もそれらしいものがある。
ところでこのアルバムを制作している頃、カルロス・サンタナはマイルス・デイヴィスと知り合いとなり影響を受けることとなる。ある日、『アブラクサス』の制作中にマイルスから電話があったという。サンタナは色々と「学んでいる」というような内容の返事をしたらしいがその影響下からインスルメンタルが多くなったのかもしれない。ジャズ的要素はあまり感じられないアルバムではあるが何処かで以前よりは感じられるのでもある。また、この頃のマイルス・デイヴィスもロック的要素が強くなり互いに意識するようになったのかもしれない。この頃のサンタナの連中は自分たちの過去のサウンドが気に入ってなかった。前作のアルバム制作から既に1年以上経過し、新たなサウンドを模索していたときだけにマイルスとの対話はいくらか参考になったのかもしれない。
ところでヒットした『ブラック・マジック・ウーマン』はイギリスのブルースバンド、フリートウッド・マックのピーター・グリーンのカバーであり、『オイジェ・コモ・バ』はラテンの巨人ティト・プエンテの曲である。でも共に見事にカルロス・サンタナ風のサウンドに仕上がっている。ティト・プエンテはサルサやラテンジャズの発展に貢献した人だが、サンタナの演奏ではブルース・ロックがラテン・ロックに変わりティト・プエンテの音楽にロックを上手く融合させている。ただこのアルバムも日本では時期尚早だった感は否めず、後のフュージョンなんかもそうだが、ヒット曲以外のインスルメンタルは嫌いだという人が多かった。その後、このアルバムが評価されるようになったのは後年になってからであろう。それだけサンタナは時代の先を行っている音楽を当時からやっていたのである。
Black Mgic Woman
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