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2008.03.03 (Mon)

スタン・ゲッツ、ジョアン・ジルベルトを聴く

 1963年3月18日、19日の両日、アメリカの音楽シーンにとって画期的な日となった。それは、このアルバム『ゲッツ/ジルベルト』が゜録音されたからである。当アルバムはスタン・ゲッツ(テナー・サックス)、ジョアン・ジルベルト(ギター、ヴォーカル)、アントニオ・カルロス・ジョビン(ピアノ)、トミー・ウィリアムス(ベース)、ミルトン・バナナ(パーカッション)、アストラッド・ジルベルト(ヴォーカル)のメンバーで録音されたアルバムであるが、ジャズ・メンのスタン・ゲッツとボサノヴァの創始者の一人であるジョアン・ジルベルトが凌ぎを削り、アメリカで大ヒットとなった。これによりボサノヴァが世界的に広まるきっかけとなったアルバムである。

 だからこのアルバムをジャズというカテゴリーに収めてしまうのには無理があるが、スタン・ゲッツというジャズのテナー奏者が参加しているので、一応はジャズのカテゴリーに入れてみた。でもこのアルバムを聴く限りボサノヴァの色が強い。でもジャズとボサノヴァの融合と感じてもいい訳であり、要は聴く側の取り方であろう。

 最近はボサノヴァと言っても、往年の人気はなく、どのような音楽なのか知らない人の方が多いだろう。思えば1960年代の日本は、ボサノヴァ・ブームであった。最も日本人に受けたのがセルジオ・メンデスだうろけども、その流行の始まりは、このアルバムに入っている最初の曲『イパネマの娘』のヒットによってもたらされたのである。独自のリズムとクールな感性が調和した心地よい曲で、ジョアン・ジルベルトとアストラッド・ジルベルトが唄っている。

 そもそもボサノヴァというのは、1950年代中頃にブラジルのリオデジャネイロに在住しているミュージシャンによって生まれた音楽で、アントニオ・カルロス・ジョビン、ジョアン・ジルベルト、カルロス・リラ、ヴィニシウス・ジ・モライス、ナラ・レオン、ロベルト・メネスカル、バーデン・パウエル等が中心的人物である。彼等は元々、ブラジルでジャズを演奏していた。それがやがて、独自のサウンドを編み出したのである。それがジャズ・サンバでありボサノヴァである。

 一方、戦後間もなくからトミー・ドーシー楽団、ベニー・グッドマン楽団でサックスを吹いていたスタン・ゲッツが、クール・ジャズ奏者として頭角を現し、やがてヨーロッパ渡って行ったが、アメリカへ帰国するや否や、新しい音楽であるボサノヴァを知ることとなる。それによってスタン・ゲッツは『ジャズ・サンバ』を録音してしまう。こうしてスタン・ゲッツとジョアン・ジルベルトが一緒に共演してアルバムを作ることとなるが、簡単には行かなかったようだ。

 この『ゲッツ/ジルベルト』を録音する間、ジョアン・ジルベルトはボサノヴァを理解しないスタン・ゲッツを罵ったという。また強引にレコーディングに参加したジョアンの夫人アストラッド・ジルヘルトに対し、スタン・ゲッツは「アストラッドは飛び入りだから、彼女に印税を払わなくていい」と言ったり、とにかく平穏のまま終わらなかったという。でも才能と才能がぶつかり合い、ここに傑作なアルバムが完成したのである。

 このアルバムは日本でも人気を呼び、ここに一大ボサノヴァ・ブームが起きたのだ・・・・。でも1970年代に入り、そのブームにも陰りが見え、今やボサノヴァも消えかかろうとしている。でも時々、ボサノヴァを聴くがも何故か心地よく耳障りもいい。ディキシー・ランド・ジャズのような暑苦しさもく、何処か都会的でクール・ジャズのような趣がある。やはりボサノヴァは、ジャズではないが、ジャズに近い音楽だということはいえるだろう。

アストラッド・ジルベルト(ヴォーカル)、スタン・ゲッツ(テナー・サックス)による『イパネマの娘』


 ジョアン・ジルベルト(ギター、ヴォーカル)、アントニオ・カルロス・ジョビン(ピアノ)による『イパネマの娘』

                                
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