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2009.08.10 (Mon)

ジュール・ヴェルヌ・・・・・『海底二万里』を読む

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 おそらく大方の人がSFの物語に一度は夢中になったことがあると思う。そのサイエンスフィクション(SF)とは、所謂、現実の世界から飛躍した空想の世界を描ききったものであるが、多くの大家がいる中で、ジュール・ヴェルヌなんていう作家は大きな位置を占めていると思う。

 ここで紹介するフランス人のジュール・ヴェルヌは、そもそも大デュマを師事してロマン劇を書いていたという。それが先日、このブログ上で紹介したエドガー・アラン・ポーから影響を受け、科学技術を織り交ぜて現実性を高める方法に着目し、1865年に『月世界旅行』を書いた。この話は砲弾に乗って月へ行くというかなり無謀な話であったが、19世紀中期において、このような突拍子も無い話を書いたということでは、おそらく最初の人ではないだろうか。現在においては砲弾で月へ行くなんて考えられないが、時代を考えればこの発想は素晴らしい。おそらく今から150年前ともなると、人類が月に行くなんていうことを真剣に考えている人はいなかっただろう。まだ飛行機でさえもなかった時代だから当然ではあるが、ジュール・ヴェルヌは空想の世界で、このような物語を幾つか書いた人として現在では名が通っている。

 そんなジュール・ヴェルヌが書いた科学小説の中に『海底二万里』がある。『海底二万里』は1869年に書かれたもので、日本で言うならば明治維新の頃である。こんな時代にジュール・ヴェルヌは『海底二万里』を書いているから驚愕せずにはいられない。話は1866年、大洋の真ん中で船舶が巨大な角のようなもので船底に大きな穴をあけられるという事件が頻繁に起こった。それでフランスの海洋生物学者アロナックス博士はイッカクのような鯨ではないかと主張し、助手のコンセーユ、銛打ちの名人ネッド・ランドの3人が調査のため軍艦に乗り込む。やがて2つの光る目を持った怪物に軍艦は沈められてしまう。だが、3人はどういう因果か軍艦を沈めた怪物に助けられることとなる。その怪物はどうやら生物ではなく、人間が造った潜水艦ノーチラス号だったのである。こうして3人はノーチラス号の船長ネモと共に、長い長い旅に出ることになる。

 この空想科学小説とも言うべき『海底二万里』が世に出た時代というのは、まだこのような潜水艦なんてものはこの世に存在しない。そんな時代にジュール・ヴェルヌは潜水艦で海の中を自由自在に行き来する潜水艦の話を書いたのである。ジュールヴェルヌ時代の潜水艦というのは、まだ人力で航行していて潜ったとしても、せいぜい船体が水面から隠れる程度で、実際に内燃機関を搭載して動くことが出来る潜水艦の誕生は1900年まで待たなければならなった。でも、『海底二万里』に出てくるノーチラス号のようなナトリウム水銀電池から電力を供給して動くという万能の潜水艦ともなると、第二次世界大戦中の潜水艦でもこのような芸当は不可能であり、実際には浮上している時間の方が長く、作戦実行の際に潜航するのが一般的であった。だから現実的にいってノーチラス号のような潜水艦が現れるのは1954年の原子力潜水艦で、ようやく『海底二万里』の世界に追いついたといえるだろう。そして、この世界初の原子力潜水艦を建造したアメリカは、この潜水艦にノーチラス号と命名した。

 こんなジュール・ヴェルヌという人であるが、どんな人物だったのだろうか。彼は1928年、フランス西部の港町ナントで生まれ、大学入学資格試験に合格し、パリで法律を学ぶようになる。そんな頃に大デュマとと知りあうことになり、法律家から一転して文筆で生計を立てる決心をする。ところが、無名の頃は当然、食ってはいけないことは百も承知である。それで家庭教師、秘書などで稼ぎながら戯曲、小説等の執筆に励み、1862年『気球に乗って五週間』を書いてこれが大成功したのである。その後は『地底旅行』『月世界へ行く』『海底二万里』『八十日間世界一周』といった今日で言うSF物の作品を続々と発表し人気作家となった。また一方で自然科学の論文を盛んに読んでいたというから、彼の科学に対する知識は専門家の域に達していたかもしれない。だから未来を予見させる数々の空想科学小説が書けたのであろう。以前はジュール・ヴェルヌの作品は子供向けだとか、幼稚だとか言って評価されなかったが、最近は彼を評価する人が増えている。なにしろジュール・ヴェルヌが生きた時代を考えれば、あの当時で現代にも通じる現象を小説のなかで表現しきったことは、彼が如何に優れた予見者であったか如実に物語っていると思う。とにかく、まだ飛行機でさえ飛んでいない時代に月世界に行く話なんて、当時の誰が思いつくであろうか。まさしく彼の存在なくしては、現在におけるSFの隆盛はなかったかもしれない。
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