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2009.08.29 (Sat)

ジャコ・パストリアスを聴く

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 ジャコ・パストリアスというベーシストがいるというよりもいたといった方が適切かもしれない。何故なら、彼は35歳で既にこの世の人ではなくなっているからである。

 ジャコ・パストリアス・・・・・1951年12月1日、ペンシルベニア州出身。ジャズ、フュージョンのエレクトリック・ベーシストといえば判るだろうか。私と同世代といってもいい最近のジャズ・ミュージシャンである。それで、ジャコ・パストリアスがどうしたかって・・・・。つまりジャコ・パストリアスはジャズの中で地味なベースという楽器を独立させたといえば大袈裟だろうか。ジャズにおけるベースというのはドラムと同様、リズム担当で、音階といえばピアノの1番下の音を分けてもらうぐらいで、これまであまり目立たなかった。それにアコースティックなベース。所謂、ウッドベースは大きいだけに奏法が難しく、自由に操ることは技術的にも困難であるが、体格にも恵まれなくてはいけなかった。また、ベースを自由に操れる奏者がいてもピチカート奏法という演奏スタイルがせいぜいの見せ場というぐらいで、奏者としての独自性を確立するに至らなかったのである。そこで出てきたのがジャズ新世代のジャコである。彼はウッドベースではなく、エレクトリックベースという新たな武器を使って、それらの壁をあっさりと乗り越え、ベース全体の歴史を塗り替えてしまったのである。

 彼は幼い頃から聖歌隊に属し、音楽的素養を見につけ、フロリダに移住してからドラムを叩いていた。ところが13歳の時、フットボールの試合をしていて右手を骨折してからベースに転向したという。時代も時代で、彼はビートルズやジミ・ヘンドリックス等に影響を受けたロック世代である。当然、エレクトリックベースに何の違和感も感じず、ジャズだからアコースティックでなければならないとは考えていない。やがて、地元でも頭角を現すようになるとプロのジャズ・ミュージシャンとの交流も多くなり、マイアミ大学でベースを教えているときにキーボード奏者のジョー・ザヴィヌルと出会ったことがきっかけで、76年にフュージョンを代表するグループ、ウェザー・リポートへ参加し、彼の名前は一躍、広まったのである。

 ウェザー・リポートの代表作を次から次へと生み出し82年には独立する。そして、自己のバンドであるワード・オブ・マウスを結成・・・・・・・・。同時にジャコ・パストリアス自身がおかしくなっていく。ミュージシャンが転落していくお決まりのコースであるドラッグに溺れだし、2人目の妻と離婚し躁鬱病に悩まされ、来日した際、コンサートでは全身に泥を塗って現れたりして、86年にとうとう精神病院に入院する。

 こうして奇行の目立ったジャコであるが最後はあっけなかった。1987年9月11日、ジャコの地元に来ていたサンタナのライブに飛び入りしようとしたが、彼のことを知らなかった警備員に追い出されてしまう。落ち込んだジャコは、その足でナイトクラブに駆けつけ泥酔した状態で入ろうとしたところ、ガードマンに停止され乱闘となり、弾みで倒れたジャコは頭部を強打し脳挫傷により意識不明となった。病院に運ばれたもの意識は回復せず、1987年9月21日永眠した。

 ところで写真のアルバムは1983年に来日した際に録音されたライブアルバムである。曲は全9曲・・・・『Invitation』『Amarika』『Soul Intro/The Chicken』『Continuum』『Liberty CIty』『Sophisticated Lady』『Reza/Giant Steps/Reza』『Fannie Mae』『Eleven』・・・・ヂューク・エリントンの曲もあれば、ギル・エヴァンスの曲もあるし、ジャコ自身の曲もある。また3曲目の『ソウル・イントロ/ザ・チキン』なんかは、最近、中高生のビッグバンドが頻繁に演奏する曲であり、本来はアルフレッド・ジェームズ・エリスの曲なのだが、ジャコ・パストリアスの演奏ですっかり有名になってしまい、今では、ジャコのオリジナルだと思っている人が多い。この曲は、冒頭からドラムの連打があり、ベースソロが続くなど、リズムセクションの聴かせどころが多く、学生バンドのレパートリー曲として大人気なのはジャコの貢献度が大きいというところかもしれない。


『ソウル・イントロ/ザ・チキン』を演奏する彼のバンドと、ベースを弾くジャコ・パストリアス。


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