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2009.09.21 (Mon)

セルジオ・メンデス&ブラジル66を聴く

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 1970年に大阪で行なわれた日本万国博覧会の会場内にある万国博ホールで、セルジオ・メンデス&ブラジル66がコンサートを行なっていたことを思い出す。残念ながらチケットがなかったので、私は行けなかったが、当時、人気のあったグループなので盛況だったそうな。

 この21世紀の世の中になってしまってからは、セルジオ・メンデスが表舞台に出る機会はすっかり減ってしまったが、1960年代はボサノヴァの大ブームがあり、当時は時の人といった印象があった。セルジオ・メンデスとは日本でボサノヴァ・ブームを巻き起こしたミュージシャンの1人で、ブラジル出身のピアニストである。幼少の頃からクラシック・ピアノを学び、やがてジャズに傾倒する。1941年生れであるから20代の年齢で既にヒットチャートに顔を出していたことになるが、その最初のヒット曲が結成したばかりのブラジル66といグループでのものである。ブラジル66とはセルジオ・メンデスが結成したブラジル65を解散して新たに結成したグループであり、メンバーはボブ・マシューズ(ベース)、ジョアン・パルマ(ドラムス)、ホセ・ソアレス(パーカッション)、ラニー・ホール(ヴォーカル)、ジャニス・ハンセン(ヴォーカル)の5人である。

 セルジオ・メンデスがブラジル66を結成した1966年というのはボサ・ノヴァの人気が下降気味で、既にジョアン・ジルベルトやアントニオ・カルロス・ビジョンといったボサノヴァの先駆者の人気が陰りを持っていた。そこへ現れたのがセルジオ・メンデスである。セルジオ・メンデスがブラジル65を前年に結成したものの、この時にはヒット曲に恵まれなかった。ブラジル65時代はジャズ的な要素が多く、大人っぽい渋みのバラードにピアノと打楽器がフューチャーされたナンバーが多く一般受けはしなかった。そこで新たに結成されたのがブラジル66である。こちらの方はポップス的要素があり、それをボサ・ノヴァ風にすることで人気を博したのである。

 当アルバムはブラジル66としては最初のアルバムであり1966年9月に発売された。収録曲は10曲で、『マシュ・ケナーダ』『ワン・ノート・サンバ/スパニッシュ・フリー』『ジョーカー』『君に夢中』『チン・ドン・ドン』『デイトリッパー』『おいしい水』『スロー・ホット・ウインド』『がちょうのサンバ』『ビリンバウ』で『マシュ・ケナーダ』がいきなりの大ヒットとなった。ブラジル65でのジャズ色を弱めブラジル66ではポップス色を強めた結果でのことであるが、この曲のヒットにより世界的に有名になったのである。『マシュ・ケナーダ』はブラジルのシンガー・ソング・ライター、ジョルジ・ベン(ジョルジ・ベンジョール)の作品で、ブラジル66の出世作となったことはいうまでもない。この曲以外だとアントニオ・カルロス・ジョビンの作『ワン・ノート・サンバ』『おいしい水』、ハーブ・アルバート&ティファナ・ブラスの曲『スパニッシュ・フリー』、ミュージカル・ナンバー『ジョーカー』、ビートルズ・ナンバーの『デイトリッパー』、ヘンリー・マンシーニ作『スロー・ホット・ウインド』、そして『Going out of My head(君に夢中)』というヒット曲もある。この曲は日本でもヒットしたが、1969年にはフランク・シナトラが歌っていたので知っている人も多いと思う。

 このアルバムを出して世界的に有名になったセルジオ・メンデス&ブラジル66はその後も既存の曲をアレンジして軽いボサ・ノヴァ調で歌いヒット曲を連発したが、中でもビートルズの『ザ・フール・オンザ・ヒル』なんかは見事なセルジオ・メンデス風で、ポール・マッカトニーの歌う『ザ・フール・オン・ザ・ヒル』よりも大衆受けしそうな曲に仕上がっている。

 ところで1970年の大阪万国博覧会の時、セルジオ・メンデス&ブラジル66が会場内にある万国博ホールで演奏していて、残念ながらチケットがなく会場内に入れなかったということを最初に書いた。この時であったが、ホールの前の人工池の噴水が吹き上がり、そのイメージと爽やかなブラジル66の曲がマッチして旋律が頭の中に自然と浮かんでいたという思い出がある。

O aria aio opa opa
O OOOO aria aio opa opa opa
Mais que nada
Sai da minha frente
Que eu quero passer

『マシュ・ケナーダ』を演奏するセルジオ・メンデス&ブラジル66


 『ザ・フール・オン・ザ・ヒル』の演奏。ビートルズとは雰囲気が違う。

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