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2010.01.02 (Sat)

ワーグナーの歌劇『タンホイザー』を観る

 歌劇『タンホイザー』のDVD
 指揮ジュゼッペ・シノーポリ
 ハンス・ゾーティン、リチャード・ヴァーサル、ヴォルフガング・ブレンデル、チェリル・ステューダー、
 ルートヴィヒ・エンゲルト=エリ、ウィリアム・ペル
 バイロイト祝祭管弦楽団、合唱団
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 新年も2日目に入ると正月気分もだれてくる。正月休みだからといって特別なことはないけども、日頃、観ないオペラというのでも観てみようと思い立ち長い長いワーグナーの歌劇を観てみた。ワーグナーというのはドイツ・オペラの作曲者として名高いが、中期以降の作品は音楽劇、通称で楽劇と言われる作品を創作し、より劇に音楽性を用いたことでオペラの発展史に貢献したことでも知られているが、ここで歌劇と楽劇と違いはあるのと問いかけがあるかもしれない。

 基本的に違いはないけども、歌劇というものは序曲、アリア、重唱、合唱、そこに間奏曲が加わり、絶えず音楽が流れているというものではない。それがワーグナーは不満だったらしく、その歌劇に無限旋律という手法を取り入れた。それはライトモティーフというメロディを得ることで途切れのない一つの音楽物語の創作。つまり音楽劇(楽劇)へと発展させたということに尽きる。

 この楽劇はことに1865年初演した『トリスタンとイゾルデ』以降の作品で見られるようになるが、今日、紹介する『タンホイザー』はワーグナーがまだ楽劇を生み出す以前の作品で、比較的、初期の作品なので、劇自体も大袈裟でなく、歌劇の趣がある。でも話が単純でいて滑稽なイタリアのオペラに比べれば重々しいかもしれない。

 そもそも、この歌劇の主人公タンホイザーは実在の人物とされる。1200年頃に生まれザルツブルク地方を含む南部の地方に住みついていた貴族の家系に属していたに違いないとされるミンネジンガーとされる。ここでミンネジンガーと何だということになるが、ミンネジンガーとは吟遊詩人のことである。中世のドイツでは騎士でありながらミンネジンガーとして歌う習慣があり、その内容はドイツの伝説や物語を主に歌うのである。この時代から後世になると、ドイツではマイスタージンガーという者が現れ、これらは15世紀頃に職人達が詩人組合を作っていたとも言われる。それで歌のコンクールのようなものを開くという。これがワーグナーの楽劇『ニュールンベルクのマイスタージンガー』で知られるところであるが、何で騎士が歌を歌わなければならないのかといった話は一先ず置いといて先に話を進めるとしよう。

 歌劇『タンホイザー』は、ワーグナーが1845年に完成させた作品で、彼が32歳の時というから若い時に作られている。したがって彼の後半の作品に見られるような大袈裟でくどいといったことはなく、まだ親しめるかもしれない。簡単に粗筋を説明すると(・・・といっても長いが)、13世紀初頭、タンホイザーと呼ばれるミンネジンガーは官能的な愛を体験したいと禁断の地とされる愛の女神ヴェーヌスの館に逃避した。ところが、そんな生活にも飽きてしまいヴェーヌスの館から抜け出してしまう。タンホイザーは仲間から何処へ行って来たのかと尋ねられ返答できなかった。しかし友人ヴォルフラムが君の恋人エリザベートが帰りを待っていると言われ、また旅立とうとしているところを踏みとどまる。

 そして、いよいよヴァルトブルク城の大広間で歌合戦が始まる。多くの貴族、騎士が集まる中、領主ヘルマンは歌合戦の課題を出す。それは『愛の本質』というものだった。それで勝者にはエリザベート賞が与えられると宣言され始まった。ヴォルフラムは「精神的な愛こそ愛の本質だ」と歌うが、タンホイザーは「愛の本質は快楽にある」と歌い官能の女神ヴェーヌスを讃美する。これによって禁断の地、ヴェーヌスの地に行っていたことがばれたタンホイザーに対して、人々はタンホイザーを国から追放せよと罵倒する。だがエリザベートが彼をかばい、1番傷ついているのはタンホイザー自身なのだという。すると領主ヘルマンは罪を償うためにはローマ教皇も下へ行くよう命じる。

 それから数年、ローマから帰ってくる巡礼者の一団があった。だが、その中にタンホイザーの姿はなく、エリザベートは天国へと旅立つ。それから間もなく、タンホイザーは帰ってきて、ローマで許しを得ることが出来なかったといって、再び禁断の地ヴェーヌスの地へ行こうとする。だが、そこへエリザベートの棺が運ばれる。エリザベートの死に絶望したタンホイザーは・・・・・・・・・・。

 一言でいうならばワーグナーのオペラは観終わると疲労困憊する。それにテーマが愛だとか死だとか人間の生活の中で普遍的にある概念を謳っているというのに、何やらストレートに入ってこず、イタリア・オペラのような「好きだ」「君は美しい」だとか言った判り易い言葉で粉飾されないから余計に判りにくいのである。でも『タンホイザー』は、そういったワーグナーの数あるオペラの中でも比較的、話が込み入ってなく、単純で判りやすく、上演時間も3時間余りと短い。

 よく言われるのだがワーグナーのオペラは上演中に寝てしまい、目が覚めても同じ場面であったということがよくある。無限旋律が延々と奏でられ男女の出演者が愛について哲学を明け方まで論じ合うような長さである。だからワーグナーのオペラは、ちょっと敬遠したいという人は多い。でも世の中にワーグナーの世界に嵌ってしまった人をワグネリアンというが、こういった人も非常に多い。どこかワーグナーの音楽を聴いていると官能的で、一度、好きになると病みつきになるといった類の音楽である。でも長い。長すぎる。聴くのに体力も精神力も必要である。今まで、ワーグナーのオペラのDVDを何度となく観てきたが、未だに『ニーベルングの指環』四部作を通して観たことがない。でも、この『タンホイザー』は、それほど体力も必要としないから大丈夫、一度どっぷり嵌るとワーグナーの世界から抜けられなくなりますよ。



 『タンホイザー』序曲の演奏(前半) 
 指揮アルトゥーロ・トスカニーニ
 NBC交響楽団


 『タンホイザー』第3幕の一場面、斬新でエロティックな演出である。
 指揮ズービン・メータ バイエルン国立歌劇場での公演。

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