2ntブログ
2025年03月 / 02月≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫04月

--.--.-- (--)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
EDIT  |  --:--  |  スポンサー広告  |  Top↑

2010.03.31 (Wed)

映画『真夜中のカーボーイ』を観る

 『真夜中のカーボーイ』1969年製作、アメリカ映画

 監督 ジョン・シュレシンジャー

 出演 ジョン・ヴォイト
    ダスティン・ホフマン
    ジョン・マッギーヴァー
    ブレンダ・ヴァッカロ
    ギル・ランキン
    バーナード・ヒューズ

 【あらすじ】テキサスから大都会ニューヨークへやってきたジョー。彼は何故かカウボーイスタイルである。目的は都会の女を相手にして金を稼ごうというものであったが、都会は甘くなく女に反対に金をふんだくられる。カウボーイを気取る彼の夢はだんだんと遠のいていく。そんな時、ラッツオというビッコの小男と知り合う。ジョーはラッツオが売春の斡旋人を世話してくれるというので10ドルを手渡すが、斡旋人はゲイ専門であった。騙されたことに気がついたジョーはラッツオを探し捉まえるがラッツオは既に一文無しであった。怒ったジョーはラッツオを問い詰めるがどうしようもない。せめて罪滅ぼしにとラッツオはカモ探しに協力する。こうしてテキサスからきたジョーと、ビッコをひいた小男ラッツオとの妙な共同生活が始まるが・・・・・。

 この映画を観たのは今から40年前のことである。ちょうど60年代後半から始まったアメリカン・ニューシネマの中の傑作の一つとされる映画である。テキサスの田舎から大都会ニューヨークへ出てきた男と、都会の片隅で生きるドブネズミのような男との間に芽生えた友情を描いた映画といえば聞こえはいいが、現実はそんなに甘いものではないことを痛感させる、まさにアメリカン・ドリームの逆をいく話である。

 テキサスの田舎から、大都会ニューヨークを目指してバスに乗るジョー。それがテンガロンハット(本当はカトルマンという種の帽子)を被りウエスタンブーツを履いたカウボーイスタイルというので笑えるが、ニューヨークで女を相手にして金を稼ごうなんていう不順な動機からして滑稽である。まさに田舎者が都会に出れば何でも適えられるといった安直な考えで出てくる人が後を立たないのは、このような思いつきを抱いているという人がいることも確かなようで、これは万国共通のことかもしれない。ところが大都会というのはそれこそ生き馬の目を抜くというが、田舎者は簡単に騙されやすく、安易に人を信じてしまう。それでジョーはあっという間に金が底をついてしまったのである。そこへ現れたビッコをひいた小男ラッツオ。汚らしくて冴えなくて都会の片隅のスラム街で生き抜いている男こそラッツオである。妙な出会いから廃墟のビルの一室で共同生活を始めるが、暖房もない凍えそうな室内。金はないし食料もない。ジョーはニューヨークにきて当初の希望から180度、逸脱した生活を送っていたが、ジゴロという稼業がうまくいきだして稼げるようになる。ところが直後にラッツオが病魔に冒され病状が悪化していき、ここで2人の間には妙な友情が育まれる。ラッツオは暖かいフロリダでの生活を望んでいた。ジョーはジゴロ稼業の最中にゲイの紳士から金を奪い、ラッツオを連れてフロリダ行きのバスに乗る。だがフロリダ目前のバスの中でラッツオはとうとう・・・・・・・・・とこれ以上は書きたくない。

 
 日頃、ありそうな現実を描いた映画だが、1960年代後半という時代だからこういった映画を撮らせたのだと思う。けして観ていて爽快感はないし楽しい事もない。それでいてアメリカの恥部を曝け出した大いなる現実の世界。けしてアメリカン・ドリームばかりが渦巻いているのではなく、ドロップアウトしていく例も多々あるといったアメリカの暗黒面を風俗描写している。夢はあれどもどのように現実化させていくか判らない。そんな中で月日ばかりが過ぎていく。こうして都会の人たちは大きな渦の中で翻弄されてしまうのである。まさにこのような孤独な男達は巷に溢れている。このような世のはみ出し者となって極貧の生活を強いられている男達は日本の都会にも大勢いるだろう。
 
 今から40年以上前に撮られた映画であるが、その主題とするところは今、観ても古臭くなく内容も訴えるものがあって現在でも立派に通用する。また歯の浮くような美辞麗句ばかりを並べていた当時の多くの映画にあって、アメリカン・ニューシネマの登場は新鮮だった。その中でも『真夜中のカーボーイ』は傑作の部類だろう。ことに『卒業』でエリート大学卒業生の役を演じたダスティン・ホフマンが今度は一転して、ネズ公ラッツオという汚れ役を演じ拍手喝采を浴びた。とにかく今の日本でも通用するテーマを持った内容であり、時代が撮らせた映画でもあり、普遍的な人間愛が垣間見られる映画で1969年のアカデミー賞、作品賞に輝いた。

 
 『真夜中のカーボーイ』トレイラー。ニルソンが歌う主題歌『噂の男』も出色だった。

EDIT  |  21:06  |  映画  |  TB(0)  |  CM(0)  |  Top↑

*Comment

コメントを投稿する

URL
COMMENT
PASS  編集・削除するのに必要
SECRET  管理者だけにコメントを表示
 

*Trackback

この記事のトラックバックURL

この記事へのトラックバック

 | BLOGTOP |