2014.08.17 (Sun)
ジョン・コルトレーンのアルバム『至上の愛』を聴く

ジャズの初心者がジャズと言うジャンルの音楽に触れてみるものの、ジョン・コルトレーンのこのアルバムを聴くとおそらくジャズが嫌いになるかもしれない。所謂、そういった類のジャズであり難解と言えば難解、前衛的と言えば前衛的である。1964年に出されたこの『至上の愛』はジョン・コルトレーンがインド哲学に心酔し、その結果として生まれた作品であり、タイトルの『至上の愛』は究極の愛を意味するものである。シンプルで魂や精神性を追求したメロディは神への祈りにも似て敬虔である。彼は創造主を讃え、人間の卑小さを認識することで、自己反省しようとしたに違いない。大衆化して肥大化したロックを取り込みジャズに消化しようとしたのがマイルス・デイヴィスなら、コルトレーンはジャズを純然たる自然発生的な感情反応の表現へ絞り込んでいこうとしたのだろう。インド哲学への傾倒や、無心に延々とソロを吹き続ける方法論などはマイルスと違った形で時代へ反応しながらジャズ原理主義的な色彩を強めっていった。
12歳で楽器(クラリネット)を手にしたコルトレーンだったが、楽器への興味を強めていったものの、高校卒業後は働きながら音楽学校に通うなど、20歳になるまではパッとしたエピソードはない。その後も酒場のバンドで食いつないだりしていた。ただ1955年にマイルス・デイヴィスのバンドに大抜擢され一躍フットライトを浴びかけたものの多くのブーイングが彼に待ち構えていて散々だったといえよう。さらに57年再びマイルスのバンドに迎えられたとき、人々はようやくマイルスがやろうとしているモードジャズという方法論を理解し得る人材であることを認めるようになる。そして60年に独立し自分のバンドを組んだコルトレーンは、次第に前衛的な音楽要素を多く組み入れるようになりフリージャズの大きな求心力となる。
彼の真摯な音楽的探求の姿勢は、多くのジャズ・ファンを魅了するようになり、コルトレーンはマイルスと共に崇高なアーティストと言われるまでになった。コルトレーンは商業化されていく60年代の音楽シーンを憂慮し、自分をピュアな状態に追い込むことでジャズをまっとうしようとしたのではないだろうか。それ故に未だに彼を崇拝するジャズ・ミュージシャンやリスナーが後を絶たないのは、そこに惹かれるからだろう。それほどコルトレーンは20世紀後半のジャズに多大な影響を及ぼしたのである。
このアルバム『至上の愛(A Love Supreme)』は組曲であり、Acknowledgement(承認)、Resolution(決意)、Pursuance(追求)、Psalm(賛美)からなる。メンバーはジョン・コルトレーン(テナー・サックス)、マッコイ・タイナー(ピアノ)、ジミー・ギャリソン(ベース)、エルビン・ジョーンズ(ドラムス)で構成され、各自がそれぞれの持ち味を発揮し見事なサウンドを作りだしている。まさにジャズ史上に残る名アルバムである。
『至上の愛』音声のみ
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