2011.05.14 (Sat)
ジョン・コルトレーンのアルバム『ジャイアント・ステップス』を聴く
ジョン・コルトレーンと言うとジャズ界の巨人の1人であるが、活躍期というか有名になったのが遅かったので、実際には第一線で活躍したのが10年ほどという短さである。なにしろ40歳という若さで亡くなっているから今では全てが伝説で語られることの方が多い。とはいうものの現実には200枚以上のアルバムを残しているので彼の足跡を知ることは容易である。
ジョン・コルトレーンは1926年生まれなのでマイルス・デイヴィスと同じ年齢である。それだけにジャズ・ミュージシャンとしてのキャリアも長く、1946年にプロとして出発しているから1967年7月に亡くなるまでには20年間の活動期間があったことになる。プロとしてスタートしてからしばらくはデイジー・ガレスピーのバンドにいたし、その後にマイルス・デイヴィスのバンドに入り名前が知れるようになる。さらにはセロニアス・モンクのバンドにも参加しているが、この『ジャイアント・ステップス』はマイルス・デイヴィスのバンドから離れる直前の1959年に録音されている。収録曲は全7曲で『Giant Steps』『Cousin Mary』『Coutdown』『Spiral』『Syeeda’s Song Flute』『Naima』『Mr.P.C』であるが、コルトレーンが自分の方向性をようやく見つけ自信を持って演奏する姿が記録されている1枚である。。
タイトル曲の『ジャイアント・ステップス』はアップテンポの激しい曲で、複雑にコード進行が変化し16小節の中で転調を10回行うなど超難関の曲となっている。その後のサックス奏者が必ず克服しなければならない課題曲となった。コルトレーンが従来のハードバップから逸脱したこと示す曲でもある。『コウズン・マリー』はコルトレーンの従姉妹に捧げた曲と言われ既存の曲である『ブルース・バイ・ファイヴ』の改作である。『カウントダウン』もハイテンポの難曲である。『スパイラル』『シーダズ・ソング・フルート』共にコルトレーンのテナー・サックスの聴かせどころ満載の曲でことに『シーダズ・ソング・フルート』はアート・テイラーのドラムスと、トミー・フラナガンのピアノ、ポール・チェンバースのベースとのかみ合いがとて良い。『ネイマ』はコルトレーンのサックスが咽び泣くように奏でられるバラードで当時の妻に捧げられた曲だと言われている。この曲はその後、多くのジャズメンがカバーした曲でもある。『ミスターP.C』は収録にあたってベースを担当したポール・チェンバースに捧げられた曲。ここではコルトレーンのサックスは勿論であるが、ポール・チェンバースのベースランニングが実にいい。このウッドベースという実に地味なリズム楽器を巧みに操り、強靭で太く逞しい音はハードなサックスにも負けていない。流石にマイルス・コンボの出身でハード・バップの中心的ベーシストである。
このアルバム以降、コルトレーンはソプラノ・サックスやフルートなども吹き、絶えず新しい試みを行っていた。60年には自分のバンドを組み、次第にアヴァンギャルドな音楽要素を多く取り入れるようになり、フリージャズの大きな求心力となったkとはいうまでもないが、このアルバム『ジャイアント・ステップス』はその布石とも思えるような1枚である。
タイトル曲の『ジャイアント・ステップス』の演奏。スコアを見ながらどうぞ。
『ネイマ』の演奏で、コルトレーンのサックスが咽び泣く。
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