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2007.10.03 (Wed)

古い映画を観る『モロッコ』

 今日の深夜というより、日付では明日になる午前0時40分にNHK衛星第2放送で映画『モロッコ』が放映されることを新聞で知った。私がこの映画を初めて観たのは35年以上前だろうか。当時、他愛も無いこの手の恋愛映画が苦手だった。モノクロ画面に映る二人のスターが北アフリカのモロッコを舞台に、ウダウダと惚れた腫れたじゃないけれど、男と女の間で情念が行き来する。私は観ていて何時も居眠りしてた覚えがある。

 その後、歳をとり人並みに成長し、人情の機微というものがある程度判るようになってくると、他愛も無いと思われた恋愛映画もだんだんと観れるようになっていた。そんな時、『モロッコ』を再び観る事があった。するとつまらない映画と思っていた『モロッコ』が、恋愛映画のスパイスを詰め込んだ粋な映画であることが判ってきたのである。

 『モロッコ』 1930年製作 アメリカ映画 パラマウント作品
 監督 ジョセフ・フォン・スタンバーグ
 出演 ゲイリー・クーパー
     マレーネ・ディートリッヒ
     アドルフ・マンジュー
     ウルリッヒ・ハウプト

 【あらすじ】外人部隊の色男トム・ブラウン(ゲイリー・クーパー)はモロッコの酒場で、歌手アミー・ジョリー(マレーネ・ディートリッヒ)に出会い恋に落ちる。でもトムには副官夫人の情人もいて、トムとアミーとの間柄に嫉妬した副官夫人は、人を使ってトムの命を狙わせる。でもその企みは失敗。この騒動が元でトムは営倉入りとなるが、夫人の名誉の為に真実を隠すのである。それを感謝した副官は、好意でトムを軍法会議にかけなかった。しかし、トムはサハラの最前線行きとなる。トムが去ったためアミーは孤独であった。そんな時、アミーに惚れていた富豪のベシスがアミーに求婚する。アミーは承諾し、結婚間近と思われた。しかし、2人を祝福する宴の席でトムが重傷だという報が入る。アミはー急いで、トムの所へ駆けつけるが、トムは怪我もせず元気であった。その翌日、再びトムは前線へと出発する。トムの所属する部隊は砂漠に向って行進を開始する。アミーは見送るが、次第に後を追う。やがてアミーは駆け足になり、砂漠の中を追いかける。ハイヒールが砂漠の深い砂にとられ速く走ることが出来ない、終いにはハイヒールを脱ぎ捨て、裸足で灼熱の砂漠を走り、何処までも追いかけていくのである。

 最後のシーン、灼熱の砂漠の砂の上を裸足で走ると火傷するであろうと誰もが考える。でも野暮なことを言い出すと恋愛映画は成り立たない。熱かろうが火傷しようが・・・・そんなの関係
ねえーー!

 この『モロッコ』という映画は、ベノー・ヴィグニーの小説『アミー・ジョリー マラケッシュから来た女』の映画化と言われているが、この小説を読んだディートリッヒは「気の抜けたレモネード」と評しあまり気が乗らなかったらしい。でも監督のスタンバーグに請われてアミー役を演じたが、彼女のハスキーな声と妖艶な妖しい雰囲気、退廃的な気だるさ、全てにおいてディートリッヒだから演じられる役であり、彼女以外は演じられないように思える。前作のドイツ映画『嘆きの天使』に出演したときから、評判になっていたディートリッヒの妖しい美貌と見事な脚線美であるが、ハリウッド第一作になった、この『モロッコ』に出演する際、パラマウント映画のチーフ・デザイナー、トラヴィス・バントンはディートリッヒにダイエットをするように言ったという。確かに『嘆きの天使』に出ていたマレーネ・ディートリッヒはふっくらとしていたが、『モロッコ』では、見事にスレンダーな女性となって現れている。妖艶で退廃的で酒場の俗っぽいシーンに似合うディートリッヒであるが、シルクハットに燕尾服を着た男装の麗人に扮し、女性にキスをするところなど、当時の日本人はどのような感覚で観ていたのだろうか。まさに、ディートリッヒの魅力で持っているような映画である。


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