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2018.02.25 (Sun)

チームパシュート

 平昌オリンピックなんてひとつも観てないけど、あのパシュートという競技だけは面白い。そもそも冬のオリンピックってスキーでもスケートでもタイムレースで一斉に滑るわけではなく全てが終らないと結果がわからない。つまり待ちくたびれる。ショートトラックという一斉に滑るスピードスケート競技があるけれど、あれは小学校の校庭ぐらいの狭いところでゴチャゴチャと一斉に滑るから、駆け引きが多すぎるし妨害もある。格闘技の要素も含まれるのかなと思ってしまう。これももう一つな競技だと思う。単にスピードだけ競うのであれば大きなリンクでタイムを競う普通のスピードスケートだけでいいのにと思ってしまう。でもスピードスケートは個人種目である。それがチーム三人で滑り半周側からスタートした相手チームと競うパシュートという競技は前から面白いと思っていた。もともと個人競技であったスピードスケートに団体戦を持ち込んだことで色々な要素が加わってより面白くなった。でも歴史は新しく2006年のトリノオリンピックからしかオリンピックの種目になってないようだ。
 ところでパシュートという種目は昔から自転車にあった。おそらくここからヒントを得たのだろう。だがこれが意外とスケートでやると面白いので観てしまう。個々の能力が優れた3人を集めても必ずしも勝てるというものではないということを、今回のオリンピックで実証されただろう。圧倒的な個人の能力があるオランダに比べて、体格的にも体力的にも劣る日本がパシュートをオリンピックレコードで優勝したからだ。つまりチームワークの勝利と戦術の勝利。ただしここに至るまでは長かったということだろう。
 考えてみれば8年前のバンクーバー五輪で日本はドイツと大接戦。0秒02の僅差で銀メダルに輝いている。このときのドイツのタイムは3分02秒82。日本は穂積雅子、田畑真紀、小平奈緒の3人で銀メダル。尚、補欠が中学生の高木美帆であった。でもこの頃の映像を観るとまだ歴史の浅い種目だと思う。今では一糸乱れぬ走法で滑る日本チームだが、この時はバラバラ。また短距離選手の小平がこのときメンバーに入っていた。
 それが4年後のソチになるとオランダが力を入れ始め、準決勝で日本と対戦。日本は10秒以上の大差をつけられ大敗。このときのオランダは2分58秒43。オランダは決勝でも勝ち優勝。日本は田畑真紀、押切美沙紀、高木菜那で臨んだのだが勝負にもならなかった。
 ここから日本のスケート連盟がソチの屈辱から学んで復活することになるのであった。コーチをオランダから呼び、科学的なデータとトレーニングの見直しと強化。さらに300日ほぼ合宿という毎日。これでチームパシュートがメキメキ頭角を現し、昨年の11月から12月にかけてのワールドカップで日本は3戦連続世界新記録。ソルトレークシティではなんと2分50秒87。いくら高地だとはいえ大変な記録だ。全て一周のラップが27秒台。そして今回のオリンピックで宿敵オランダと決勝で対決。高木姉妹に佐藤という世界記録保持者とメダリスト揃いのオランダが好レースを展開。一時、オランダがリードしたが持ちタイムのいい高木美帆が再び先頭に立ち滑り出すと日本が終盤でリード。2分53秒89のオリンピックレコードで金メダル。今回はオランダも必死だった。でも終盤でバテて、2分55秒47。それでもオランダ最高のタイムだった。個々の力を伸ばしてきたオランダに対し日本は空気抵抗をなくすことや追い抜きの時のスピードの劣化削減、体力の温存、スピードの維持、そして一糸乱れぬ3人の揃ったスケーティングと色々と対策がとられた結果での勝利であった。勝因は一言で言えないが、フィジカル面で遥に劣る日本がチーム戦では勝てるということを体現した今回のパシュート女子であった。
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