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2008.05.31 (Sat)

シューマンのピアノ協奏曲を聴く

   シューマン ピアノ協奏曲 イ短調 Op.54
 マルタ・アリゲリッチ(ピアノ)、指揮ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ
 ワシントン・ナショナル交響楽団
s-IMG_0123.jpg


 その昔、人気のあったテレビの特撮ドラマ『ウルトラセブン』の最終回で、主人公のモロボシ・ダンが突如として友里アンヌ隊員に告白する。

「アンヌ、僕はМ78星雲からやって来た宇宙人なんだ」

 アンヌ隊員は驚いて突然、タターンタターンタターンタタタタンタタンタンタンとシューマンのピアノ協奏曲が流れるのだった。だからシューマンのピアノ協奏曲というのは、知る人ぞ知る名曲ということになる。

 一般的にシューマンはピアノの独奏曲の作曲家として有名である。知名度の高い『トロイメライ』が含まれる『子供の情景』を始め、『クライスレリアーナ』『幻想小曲集』『子供のためのアルバム』『森の情景』等、また歌曲の作曲も多くて『ミルテの花』『女の愛と生涯』や小品も多い。だからオーケストラをバックにしたピアノ協奏曲というのは、珍しく、シューマンのピアノ協奏曲はこの一曲しか存在しない。

 当初、シューマンは『ピアノと管弦楽のための幻想曲』として作曲し、後に間奏曲とフィナーレを加えて3楽章からなるピアノ協奏曲イ短調として完成させた。それは1845年、シューマン35歳の時で、曲の初演では妻のクララ・シューマンがピアノを弾き、指揮をメンデルスゾーンが務めたのである。

 シューマンは1810年生まれというからショパンと同年代ということになる。幼いときから音楽に親しんでいたが、家庭の事情で法学の道へ進む事となる。だが音楽の道が捨てきれず、20歳になって高名なピアノ教師フリードリヒ・ヴィークに弟子入りする。つまりこのピアノ教師の娘がクララ・ヴィークで、後にロベルト・シューマンの妻となる女性であった。その後、シューマンはピアノ演奏家の道は残念し、作曲家として世に出て行くのであるが、彼の曲をピアニストでもあるクララが弾きつづける事となる。

 このような経緯があり、シューマンは作曲家として出発した頃はピアノ曲が多かったのである。その後、歌曲の作曲が増え、31歳で交響曲の作曲を始め、1841年交響曲第1番『春』を完成させた。つまり管弦楽の作曲に自信がつきだし、ようやく完成にこぎついたのがピアノ協奏曲だったのである。でも先ほど『ピアノと管弦楽のための幻想曲』として作曲された曲であると述べたが、4年後にはピアの協奏曲として生まれ変わっている。でも何故、シューマンはピアノ協奏曲に作り変えたのであろうか。

 一説には友人のメンデルスゾーンが作曲したピアノ協奏曲を聴いて刺激を受けたからだともいわれ、後に間奏曲とフィナーレが付け加えられたのに、曲全般を通して聴いても統一感があり、完成度の高いピアノ協奏曲として評価が高い。

 3楽章形式だが、1楽章はのっけからピアノの序奏で始まり、全体的にロマン主義的な叙情が漂い華やかな楽章である。かつて『ウルトラセブン』の最終回では、この第1楽章が使われドラマをより劇的にする演出効果を齎した。第2楽章と3楽章は連続して演奏され、間奏曲と題された2楽章から軽快な3楽章に転じて終わる。

 どちらかというとシューマンのオーケストレーションは地味だが、この曲は比較的に色鮮やかな音色である。でも残念ながら、この頃からシューマン自身、精神的におかしくなる兆候が見え出し、躁鬱病、精神状態の悪化などもあって自殺も計っている。その後、持ち直し彼を慕ってやってきた若者の面倒を見ている。その若者こそ、ヨハネス・ブラームスである。

 ヨハネス・ブラームスの才能を見抜き、彼の将来を見透かしていたが、ブラームスが作曲家として独り立ちする前に精神病院に入院するほど精神が病んでいた。やがて病も快復することもなく1856年、46歳でシューマンはこの世を去る。その後、彼の名声を確立するために妻クララは、夫の作曲した曲を積極的に弾き続け、その後40年も生き続けるが、何故か、ブラームスとの親交が深くなり、2人は男女関係があるとまで言われるが、真相のほどはわからない。結局、短命に終わったロベルト・シューマンが亡くなってから、クララは40年後の1896年に亡くなり、ブラームスは41年後の1897年に亡くなる。何とも意味ありげな話ではあるが、晩年のシューマンは精神障害に苛まれていたにも拘らず遺言を残している。それは「私は知っている」だった・・・・・・・・。

シューマンのピアノ協奏曲の演奏。マルタ・アリゲリッチ(ピアノ)、指揮リッカルド・シャイー

EDIT  |  19:34  |  音楽(クラシック)  |  TB(0)  |  CM(2)  |  Top↑

*Comment

♪お早うございます。

 JACKさん、お早うございます。
シューマンの協奏曲というのは、このピアノ協奏曲とヴァイオリン協奏曲、チェロ協奏曲があって、あとピアノ小協奏曲という序奏とアレグロ・アパッショナートだけで構成された曲がありますが、何れも特徴があります。どちらかというとシューマンは管弦楽曲が苦手で4曲ある交響曲は、何れも地味で弟子のような存在のブラームス、またドヴォルザーク、チャイコフスキーの交響曲ほど出来栄えが良くありません。それだけに協奏曲は丹精込めて作った曲だということがわかります。

 あと管弦楽曲としては劇音楽『マンフレッド』序曲が有名でしょうか。でもやはり器楽曲の小品にいいのがあると思います。シューマンは妻のクララに弾いてもらいたいのか、特にピアノ五重奏曲やピアノ四重奏曲、ピアノ三重奏曲、ピアノ・ソナタ、アラベスク、その他のピアノ小品集が多く、これらの曲はまとまりがあって優しい曲が多いという印象があります。

 おそらくシューマンという人はたいへん繊細な人ではなかったかと思います。だから精神的に傷つきやすく、些細なことで気に病むタイプではなかったかと・・・・・。ブラームスとの関係は有名ですが、シューマンとブラームスは数年の接触でしかありませんでした。だからその後、40年にわたってクララとブラームスの親交が続いたというのは、やはりそうとう親密な関係にあったのではないでしょうか。でも残念ながらフランソワーズ・サガンの小説は読んだことがないので、よくわかりません。私の姉が昔、読んでいて書棚にもあったと思いますが、男が読むような小説ではないと考えていました(笑)。
uncleyie |  2008.06.01(日) 09:16 |  URL |  【コメント編集】

♪名場面に名曲あり

uncleyieさん、こんばんは。

私はウルトラセブンは本放送でも、夏休みの再放送でも何度か見ています。でも、当時はセブンとパンドンとの戦闘場面や、明星のすぐそばを流れる流星以外のことまでは、詳しく覚えていません。

今思えば子供向けの特撮ヒーロー物では珍しいロマンスであり、別れの名場面でもあります。その後に続くモロホシ・ダンの別れの台詞もよかったです。

それが、クラシック愛好家の間でも広く知られていることは、3年くらい前にネットの書き込みで知りました。意外でした。

私は、シューマンのピアノ協奏曲は、ディヌ・リパッティのモノラル録音でよく聞きました。というか、他の演奏ではあまり聞いていません

冒頭に導入部分が無く、いきなりピアノが演奏される所には、強い印象を持ちます。クリーグのピアノ協奏曲、バルトークの三番やチャイコフスキーの協奏曲にも、ピアノがすぐに弾かれますが、先にオーケストラの音が入ります。
そのまま曲が展開していくのですが、三楽章をぶっ続けで演奏する協奏曲もそれほど知りません。思いつくのは、同じくシューマンのチェロ協奏曲くらいです。こちらは、ロストロポービッチが指揮ではなく、ソリストとして演奏しています。かの、ジャクリーヌ・デュ・プレのお気に入り曲でもありました。

シューマンはいずれの協奏曲も1曲しか書かれていません。それにもかかわらずこれらが数ある協奏曲の中でも傑作と呼ばれるところがすごい点です。でも、発表された当時は、斬新すぎてあまり聴衆に理解されなかたとも聞いています。
ロマン派の時代の作品のためか、情感を込めやすい部分もあり、よい演奏を聞くとぐっときます。これをドラマに使えば劇的効果は抜群です。

クララ・シューマンは、ピアノの名手としても知られています。暗譜による演奏などで、後のピアニストにも影響も残しています。どんな演奏だったのか興味深いところです。

ヨハネス・ブラームスとロベルト・シューマンは、師弟というより友人のような親密な関係でした。互いに相手の音楽を認め合う間柄だったのでしょう。

一方、ロベルト・シューマン亡き後のクララ・シューマンとブラームスの関係は複雑です。ブラームスは親友の残された家族に対して様々な援助をしました。ブラームスが生涯結婚しなかったこともあり、二人の間柄に様々な憶測が生まれましたが、真相はわかりません。果たして恋愛的な要素があったのでしようか、気になるところです。

後に、フランソワ・サガンが『ブラームスはお好き』という小説を書いています。これは、ブラームスとシューマン一家の関係に着想を得て書かれたのだそうです。
JACK |  2008.06.01(日) 01:02 |  URL |  【コメント編集】

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