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2008.12.12 (Fri)

バッハのチェンバロ協奏曲第5番を聴く

 チェンバロ協奏曲第5番ヘ長調BWV1056
 カール・リヒター(チェンバロ、指揮)、ミュンヘン・バッハ管弦楽団
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 この時期になると何故か崇高で荘厳なバッハの曲が聴きたくなる。でもバッハというのはとにかく曲が多い。番号がついている曲だけで1000曲以上あるようだが、宮廷音楽家、教会の音楽監督として多くの曲を残したことからカンタータや、ミサ曲も数え切れないが、私がよく聴くバッハの曲というと決まってチェンバロ曲である。チェンバロというのはハープシコードともクラヴサンとも言うが、バロック音楽にはなくてはならない楽器であるものの、音が小さくて現在ではほとんど使われることのない楽器である。でもピアノの原型といえばわかるだろう。一応は鍵盤楽器であるが、ピアノのように強弱をつけることも出来ず、音量もか細い。でもあの優しい音色と、心に沁みる適度の音量で奏でられると、聴いていても心地よくて癒される。

 この楽器の発展型がピアノのようなもなのだが、ピアノはハンマーで叩いて音を出す分、大きな音がが出て、色々なジャンルの音楽で使われるようになった関係から、今日では盛んに何処でも聴くことが出来る。つまり万能楽器と言ってもいいだろう。しかしチェンバロは、現在において、バロック音楽という範疇に追いやられ、バッハやヘンデルといったバロック音楽の大家の曲を演奏する時のみに奏でられる楽器といった意味合いが強い。だが、私はそのようなチェンバロの音色と慎ましくて控えめの音しか出せないこの古楽器にたいへん愛着がある。そして、そのチェンバロの数ある曲の中で、このバッハのチェンバロ協奏曲第5番は最も聴いているだろう。3楽章から成り、全曲を通しても10分ほどで演奏が終わってしまうが、とにかく耳に心地よく入って来る。

 そもそもバッハはチェンバロ協奏曲を13曲作っているが、これらは教会外の活動で生まれた曲だといわれている。バッハは宮廷音楽家であったり教会の音楽家であったことから、依頼により作曲するか、または宗教色の強い音楽を生み出さなければならなくて、教会での人間関係がギクシャクしていた時期、ライプツィヒ大学の学生達と一緒に演奏を楽しむことに喜びを感じていたようである。

 さて、このチェンバロ協奏曲第5番は、バッハのチェンバロ協奏曲の中で最も完成度が高く、有名な作品となっており、両端楽章で繰り広げられるチェンバロのブリリアントな名人芸は、その華やかな魅力によって聴き手を捉えて離すことができない。1738年から1739年頃にかけて作曲されたと考えられていて、このチェンバロ協奏曲第5番 ヘ短調の原曲は、消失したヴァイオリン協奏曲 ト短調の編曲であるとされているが、この原曲がバッハ自身の作品なのか、他の作曲家の作品であるかどうか不明。第2楽章はカンタータ第156番『わが片足すでに墓穴に入りぬ』のシンフォニアと同一の音楽で、『バッハのアリオーソ』として親しまれている。なお、BWV1056aが存在する。

 バッハとしては、初期のシンプルで古風な様式を示しているものの、素材の有機的な展開といった点では、かなり巧みな書法が駆使されている。1738年から1742年頃にかけて作曲されたと考えられている。

 第1楽章 ヘ短調、4分の2拍子。リトルネッロ形式による楽章で、同一音形を装飾反復し少々いかめしい表情をもっていてる。

 第2楽章 ラルゴ 変イ長調、4分の4拍子で、弦のピッツィカートの伴奏で、チェンバロで甘美なメロディが繰り広げられる。このラルゴはかつて映画『恋するガリア』の中においてスキャットで歌われ、とても印象深い挿入曲だったから、今でも忘れられないメロディとして覚えている。

第3楽章 プレスト ヘ短調、8分の8拍子。
 リトルネッロ形式による舞曲風で活発な楽章である。エネルギッシュでリズミックな性格を特色としている。

 とにかく夜の長いこの季節、心が癒されるバッハのチェンバロ協奏曲を聴いて、冬を乗り切りたいものである。

チェンバロ協奏曲第5番 へ長調 BWV1056~第2楽章(音声のみ)

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