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2010.09.27 (Mon)

デクスター・ゴードン・・・・・『ゲッティン・アラウンド』を聴く

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 デクスター・ゴードンというと麻薬に溺れたといったよくないイメージがあるもののその音楽性は誰も認めるところであり、かのテナー・サックス奏者ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズといったあたりに最も影響を与えたのは彼であろう。彼は1923年に医者の息子として生まれているので(ロサンジェルス出身)、黒人としては比較的裕福であったといえよう。楽器を始めた当初はクラリネットを吹いていたが、その後にサックスへ転向、1940年の、17歳の時ににプロとして活動を開始したというからキャリアは長いのである。20歳でバンドのリーダーを務めたり、ビリー・エクスタイン楽団のテナー・サックス奏者として演奏していたが、第2次世界大戦が終結した1945年にニューヨークへ行き、バド・パウエル、アート・ブレイキー、マックス・ローチといったジャズメンとセッションを何度も行い、この当時の演奏は聴くことが出来、当時から包み込むような温もりのある音色であり艶やかさは引き立っていた。まさにサックスがジャズ楽器の中で大きな役目を担いだした頃のテナー・サックス奏者の1人であることが判る。

 戦前から活動をしていてバップ期の演奏からハード・バップまで聴かれる等、幅が広い、ただデクスター・ゴードンは先述したように1950年代は麻薬で棒に降った形となってしまい残念である。1960年に社会復帰を果しレコーディングも積極的にこなし活躍の場をヨーロッパにまで拡げたのであるが、ここで採り上げているアルバム『ゲッティン・アラウンド』もそういった1960年代に録音されたアルバムである。

 収録曲は『黒いオルフェ』『フー・キャン・アイ・ターン・トゥ』『ハートエイクス』『シャイニー・ストッキングス』『エヴリバディズ・サムバディズ・フール』『ル・クワフール』の6曲で、演奏に参加したメンバーはテナー・サックスがデクスター・ゴードン、ヴィブラフォンがボビー・ハッチャーソン、ピアノがバリー・ハウス、ベースがボブ・クランショウ、ドラムスがビリー・ヒギンスである。

 まずは冒頭の『黒いオルフェ』から圧倒される。この有名なブラジル映画の主題曲を見事なアプローチで聴かせてくれる。ラテンの輝きと哀愁のある響きに加えデクスター・ゴードンのオーソドックスなテナー奏法がより彩を加える。ここでは先鋭的な演奏をするのではないが、デクスター・ゴードンのテナーがなければ、この曲は成立しないだろう。『フー・キャン・アイ・ターン・トゥ』はデクスター・ゴードンのテナーがフューチャーされているスローナンバーである。『ハートエイクス』の軽快さにテナーが独自のフレーズで掛け合っている。『シャイニー・ストッキングス』も耳障りのいい曲調でて、ここでもテナーが踊っている。そこへヴィブラフォンとピアノが軽快なソロを展開する。『エヴリバディズ・サムバディズ・フール』はスローナンバー。この緩やかなテンポからゴードンのテナー、バリー・ハウスのピアノ囁くように曲を覆っている。『ル・クワフール』はデクスター・ゴードン自身の曲である。ミィデアム・テンポでが軽快な曲である。テナーとヴィブラフォンとピアノがそれぞれソロを奏で、デクスター・ゴードンはソロのところでドビュッシーのフレーズを巧に引用している。或る意味で聴かせどころかもしれない。ところでデクスター・ゴードンは映画『ラウンド・ミッドナイト』に出演し、アカデミー主演男優賞にノミネートされたこともあるなど多芸ぶりも発揮。ただ麻薬がなければもっとジャズメンとして輝いていたのに・・・・・・・。


 映画『ラウンド・ミッドナイト』の中でで『アズ・タイム・ゴーズ・バイ』を演奏するデクスター・ゴードン。

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