2011.04.29 (Fri)
ボブ・ディランのアルバム『追憶のハイウェイ61』を聴く

このアルバムが発売されたのは1965年8月30日だという。そんなに古いのかと改めて思った。何故ならあまりにも当時のヒットポップスとかけ離れているからである。あの頃、ビートルズの名曲『イエスタデイ』が出た。ビートルズは爆発的な人気を得て当時のポピュラー音楽の概念を変えていったが、現実的にいってこの『イエスタデイ』が出る前と出てから以降の評価は違ったものになっている。ただの人気あるビートポップス・グループから一躍ミュージシャン、アーティストの域に登って行った。同じ頃、一般受けしないが玄人には評価されていたフォーク・シンガーがボブ・ディランだったように思う。1965年より遡ること3年前、ボブ・ディランは『風に吹かれて』を出した。この曲はヒットした。ただしボブ・ディランが歌った『風に吹かれて』ではなくPPMがカバーした『風に吹かれて』がヒットしたのであった。それとともにボブ・ディランの名は有名になっていった。ギターとハーモニカで淡々と歌い上げる。しわがれ声で灰汁が強い歌い方をするので一般受けしないのだ。どちらかというとメロディよりも詩に訴えるものがあり、プロテストソング、トーキングブルースを得意としていて、ちょうど1960年代前半の公民権運動が盛り上がった時代背景も手伝って時代の代弁者としてブレークしたのである。
それが次第に時代の代弁者としてのボブ・ディランではなくなっていき、曲そのものも変化していくのであるが、アコースティックから徐々にエレキサウンドが入っていく。いわばフォークとロックの融合の様な形でボブ・ディランの新たなサウンドが確立しつつあったのが、この6枚目のアルバム『追憶のハイウェイ61』である。このアルバムは有名な楽曲『ライク・ア・ローリング・ストーン』が冒頭に入っているということでボブ・ディランのアルバムの中ではよく売れた。ただし評価については当時あまり高い評価を受けていたような記憶はない。音作りが当時の流行りとは逸脱していて先鋭的だったからであろう。それが月日が経っていくごとに、このアルバム自体が評価を上げていき、2003年になって雑誌『ローリング・ストーン』が選出したオールタイム・ベストアルバム500の第4位にランクされている。
収録曲は9曲で『Like A Rolling Stone』『Tombstone Blues』『It Takes A Lot To Laugh,It Takes A Train To Cry(悲しみは果てしなく)』『From A Buick 6(ビュイック6型の想い出)』『Ballad Of A Thin Man(やせっぽちのバラッド)』『Queen Jane Approximatery』『Highway 61 Revisited(追憶のハイウェイ61)』『Just Like Tom Thumb’s Blues(親指トムのブルースのように)』『Desolation Row(廃墟の街)』・・・・・
このアルバムが出た頃、私はまだ小学生だったので聴いたという記憶がない。ラジオもボブ・ディランの曲は滅多に流してなかったように思う。ただし姉が持っていた洋楽専門の雑誌で面白い髪型をしているシンガーがいるといった印象があり名前は覚えていた。が、ボブ・ディランの曲をラジオでも聴いたこともなかった。ラジオで流したこともあるだろうが覚えていたという印象がない。今聴いてもボブ・ディランの曲は印象に残らないかもしれない。それなら何故ボブ・ディランがここまで有名になったかというのは、『風に吹かれて』をPPMがカバーしてヒットしたように、当時、ボブ・ディランの曲を色々な人がカバーしていたからだ。『ミスター・タンブリンマン』『くよくよするな』『はげしい雨が降る』『悲しきベイブ』『イフ・ノットフォー・ユー』『いつまでも若く』等の曲は当時のヒットチャートを賑わしていた。ただし何れもボブ・ディランではなくカバー曲によってである。ボブ・ディランが歌うよりも他の歌手が歌う方がよりメロディアスだからで、本人が歌うと印象がガラっと変わるのであった。しかし、ビートルズのジョン・レノンがボブ・ディランに傾倒していると聞いて注目しないといけないなあと感じ、中学の頃、ボブ・ディランを真剣に聴くようになった覚えがあるが、なかなか馴染めなかったものだ。それは今でもそうなのであるが・・・・・・・。
ただし好き嫌いは別にして革新的アルバムであったことは確かであり、このアルバムが発売されてから以降、ロックの歌詞が認められるようになりポピュラー音楽そのものが3分間芸術なんていわれたものから大いに飛躍していったのだが、このアルバムの曲は当時のものとしては実に長い。冒頭の『ライク・ア・ローリン・ストーン』からして6分を超える曲だが、アルバム最後の『廃墟の街』に至っては実に11分に及ぶ。当時の常識を打ち破ったアルバムであり、その後のポピュラーミュージックの在り方を確実に変えた一枚であり、ボブ・ディラン自身がいうように重要でかつ革新的である。
『ライク・ア・ローリング・ストーン』を歌うボブ・ディラン(1995年)
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