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2014.09.21 (Sun)

ブラームスのクラリネット五重奏曲を聴く



 クラリネット五重奏曲と言うとモーツァルトの五重奏曲が最も有名だが、ブラームスにも立派なクラリネット五重奏曲がある。昔はよく聴いたのだが、最近はほとんど聴かなくて小生の中では忘れられた曲になっていた。それがである先日、大フィルのメンバー5人がこのブラームスのクラリネット五重奏曲 ロ短調 作品115を演奏しているところに出くわした(地下駅のそばにあるアートミュージアムのようなところで無料で演奏していた)。それで聴いている間に昔日のことを思い出したまでである。渋いが良い曲なのである。またブラームスはクラリネット三重奏曲と言うのも作曲していて、ブラームスの室内楽は地味ながらなかなか優れた作品が多い。もっとも同時代のチャイコフスキーやドヴォルザークのようなメロディが溢れんばかりに流れる煌びやかな曲がなく、旋律が沈んでいる雰囲気がありどうしても重苦しい。それ故にあまり人気がないかもしれない。しかし、それでいて小生は一時期、ブラームスを頻繁に聴いていた時期があった。30代の頃だったかな。最も人生で悩んでいた時期かもしれない。どうもメランコリックになるとブラームスが聴きたくなったのかな。今となったら当時のことを思い出そうとしても思い出せない。今はもうそろそろ老後を如何に有意義に過ごすか、それを考える年齢になってきたから30代の頃のことを振り返ることもなくなった。でも、あの当時、ブラームスに陶酔していたかな。今でもブラームスの交響曲1番、3番、4番はよく聴くし、弦楽六重奏曲の1番も相変わらずよく聴く。そういった中でクラリネット五重奏曲も何度か聴いた曲でもある。でもそれ以来、聴いたこともなかった。
 それで20年以上の時を経て真剣に聴いてみたが、ちょっと長いかな。4楽章の曲なのだが40分ぐらいある。もっともダイナミックな交響曲だと40分なんてあっという間だが、室内楽はやはり全楽章を通じても退屈する部分がある。それは致し方がないものの、此の年齢になると聴くのも忍耐力がなくなってきている。途中で聴くのを止めようかと思ったりもする。小生はこう言った時は、その曲の楽譜を買ってきて、スコアを見ながら聴くようにしてきたのだが、残念がらこの曲のスコアを持ってない。スコアを見ながら聴くと我を忘れて没頭できるのである。昔はそういった聴き方をよくやっていたものだ。こうして曲を覚えていったものである。またやろうかな。
 ところでこのブラームスのクラリネット五重奏曲はブラームスが58歳の時の1891年に完成した。ブラームス晩年の曲である。ブラームスは作曲活動から引退を考えていて、作曲に対する体力衰えを感じていたのだが、1891年春にマイニンゲンを訪れて事情が一変する。同地の宮廷には優れたオーケストラがあり、そのオーケストラに居たクラリネット奏者リヒャルト・ミュールフェルトを独奏者に起用したコンサートに足を運び、ブラームスは感銘を受けたのである。こうして引退を考えていたブラームスに、またふつふつと作曲への意欲が湧いてきたようで、此の年の夏ブラームスは、保養地イシュルに滞在し、一気にクラリネット三重奏曲とクラリネット五重奏曲を完成させたのである。 けして多作ではないブラームスが2曲もの大曲を1ヶ月もかからずに書きあげたのは異例のことだった。よほど創作意欲が湧いていたのだろう。こうして同年には初演され好評を博すのである。
 全4楽章からなり第1楽章のアレグロはソナタ形式で、弦楽器が奏でる主題に対してクラリネットがアルペジヨの上昇楽句を吹きながら加わるところは、どこかモーツァルトのクラリネット五重奏曲を連想させないでもない。第2楽章はアダージョで、クラリネットが陶酔感を奏でる。第3楽章はアンダンティーノ、第4楽章はコン・モートといずれも短いが、終楽章のコーダでは第1楽章の第1主題が再び現れやがて曲は終結する。
 全体的な感想としては晩秋の澄み切った空気の中で黄昏ながら聴くのにちょうどいい曲である。


スコアを見ながらクラリネット五重奏曲をどうぞ

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