2016.06.26 (Sun)
アルバム『チャーリー・パーカー・ウィズ・ストリングス』を聴く

チャーリー・パーカーなんて死んで60年以上になるけれど、未だにジャズ界に轟いている名前である。戦後のモダン・ジャズに大きな影響を残し、ビ・バップなんていうのは彼の閃きから生まれたような産物かもしれないし、彼がいなかったらジャズって言うのは何時までもスウィング・ジャズのような旧態依然としたダンス音楽か伴奏音楽の域から発展せしないまま限界が生じ、商業音楽の領域で埋もれていったかもしれない。それが芸術的な方向性を持ち、ジャズがより広まって聴かれる音楽の領域へ高めていったのはチャーリー・パーカーやディジー・ガレスピー等のジャズメン達といっても過言ではないだろ。それだけにチャーリー・パーカーには色々な呼び名がある。バードとかヤードとか、ヤードバードとも言われ、すでに存命の頃からジャズ界の巨人だったのである。でもその当時のジャズの主流はビッグバンドでありスウィング・ジャズであり、これらのジャズと一線を画していた音楽を求めていたパーカーは自ら破壊者でもあった。
ところでジャズ界に何故、こんなチャーリー・パーカーのような人物が突然現れたのか不思議ではある。それまでのジャズとは一線を画していて新たな芸術的な要素を含んだジャズを生み出したチャーリー・パーカーであるが、彼は早熟だったらしく頭脳も優れていた。何しろ13歳でハイスクールに進学したものの、周囲の理解力の乏しさに辟易して勉強へ興味を失ってしまう。しかし、そこのスクール・バンドでサックスという複雑な音の組み合わせを表現できる楽器に出会いたちまち虜になってしまうのである。彼が育ったカンザスシティーは当時のアメリカでも有数のジャズが盛んな土地であった。まだローティーンだった彼は年齢をごまかしジャズ・クラブに潜り込みジャズの興味を深めていったのであろう。プロデビューは何と15歳。ほどなくニューヨークへ進出するが甘くなく、故郷に戻って経験を積み20歳頃からニューヨークでもジャズの世界で活躍できるようになる。もうこの頃から、演奏テクニックとともに音楽理論も独学で磨いたという点にあり、ヒット曲のコード進行を使いフレーズとハーモニー展開を即座に考えていくというビバップのアイデアも、頭の回転が速い彼だからこそ体系化出来るほどの質と量のものとなって湧き出したのだろう。謂わば閃きという天部の才能と技術があってなし得る技なのである。
ところで当アルバムは1949年11月に録音されたものであり、チャーリー・パーカーが亡くなる5年ほど前のことである。ビバップというのを生み出したものの、一般的において人気がわったというのではなく、パーカーの音楽は高尚的すぎて大衆受けをしたのでもない。まだ当時のジャズ・ファンというのは相も変わらずビッグバンドの方が人気があったし需要もあった。ただミュージシャンの間ではチャーチー・パーカーの知名度は高く、彼の与えた影響は非常に大きかった。ただ彼の音楽は判りにくかったというのは当然のことであって、素人には彼の功績が凄いのだと言っても体現できないものであった。そんな中でパーカーはこのアルバムを録音したのである。アルト・サックス、ピアノ、ベース、ドラムスのジャズメンに加え、オーボエ、ヴァイオリン3、チェロ、ハープが参加している。
今までのパーカーの音楽と比べるとメロディに忠実で判りやすく、パーカーの新たな一面が見いだされる。ストリングスの連中はNBC交響楽団所属で当時、トスカニーニの薫陶を受けた強者揃いである。一方、アルト・サックスを吹くチャーリー以外のリズムセクションはスタンリー・フリーマン(p)、レイ・ブラウン(b)、バディ・リッチ(ds)、そこへオーボエのミッチ・ミラーと実に興味深い面々が揃っている。バディ・リッチなんて凄腕のドラマーだが、このアルバム参加によって名をなすようになったのではないだろうか。曲目はApril in Paris, Summertime, If Shoud Lose You, I Didn’t Know What Time Was, Everything Happens To Me, Just Friendsが入っている。
チャーリー・パーカーの意外な側面が垣間見えるというか、伊達にヤードバードとは言われてなかったチャーリー・パーカーである。実に自由な音楽性が発揮されている。その後、チャーリー・パーカーの影響はジャンルと飛び越えてしまい音楽界の中ではとても大きくなり、海を越えて彼の死後、イギリスでブルース、ロックのグループであったヤードバーズは彼の名前をいただいていて、それが後にレッド・ツェッペリンへと発展することを考えたら、チャーリー・パーカーはミュージシャンの中でこそ最も認められたジャズメンの一人であったと言えるだろう。
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