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2008.01.26 (Sat)

浮世絵名品展へ行く

http://www.city.kobe.jp/cityoffice/57/museum/ 

 当ブログのカテゴリーの中に美術というものが含まれているのに、一向に美術関係の記事がないと不満の声が聞こえてきそうである。もしかして筆者は美術が苦手なのではないかとも思われているかもしれない。でも嫌いではない。いや、美術館にはよく行くし、絵や彫刻や工芸品を鑑賞するのは文学作品を読む以上に好きである。でも、最近はすっかり美術館にも足が遠のいてしまったし観にいかなくなった。

 けして出不精ではないのであるが、週一回の休日に、わざわざ美術館に行ってまで美術を鑑賞しようなどと、考えなくなったからかもしれない。それでも若いときは、片っ端から美術館、博物館等に足繁く通っていたものである。ところが、最近は美術品を前にしても感動が薄くなったというか、若いときのような感受性もなくなったというべきか、芸術のジャンルにおいて凡そ美術というものに、最も興味、関心がなくなったからかもしれない。

 かつてはレンブラント展、エルミタージュ展、印象派展、プラド美術館展、バルビゾン派展、ピカソ展、ゴッホ展、ルノワール展、シュールリアリズム展、モネ展、ベラスケス展、ルネッサンス展、セザンヌ展、アングル展、エコール・ド・パリ展・・・・それこそ行かないものは無いほど展覧会通いをしていたものである。それで、ほとんど美術誌に掲載されているような絵は見尽くしてしまった感がある。ところが私には弱い分野というものがある。それが日本画なのである。だから、これからは同じ美術展に行くにも日本の美術を重点的に観るべきではないかと考えた次第である。それで今日は神戸まで『浮世絵名品展』を観にいってきた。

 イギリスにあるヴィクトリア・アンド・アルバート美術館所蔵の浮世絵が大挙して展示してあるというので、久々に神戸まで行ってきた。神戸に行くのは半年振りぐらいである。昔は友人に会う為に頻繁に神戸へ行ったものであるが、最近はあまり行かなくなった。阪急で三宮まで特急を乗り継いでいくが、乗車駅が増えて昔よりも所要時間がかかるようになった。阪急は、これから日本の人口増が見込めなくなったから、乗客を拾おうと考えたのか、昔よりもやたらめったら停車駅を増やしてしまった。これだと京都から神戸に行くのには、何かと便利が悪い。近くまで電車で行くぐらいならいいだろうが、50km以上の距離を移動するのには、やりにくい時代になってきた。京都から大阪まで行くのにも停車駅が多くなったとぼやいていたのに、大阪の十三から三宮まで行くのにも、西宮北口、夙川、岡本と停車する。このせいで時間が予想以上にかかってしまった。ああ、昔が懐かしい。

 ようやく、三宮に到着して、神戸の旧居留地まで歩く。この付近は先の震災でズタズタにやられたが、今では見事に復興していて、超高層ビルもチラホラと目立つようになってきた。今回、『浮世絵名品展』が行われている神戸市立博物館は、整然とした居留地の一画にある。さっそく1100円を払って館内に入る。

 3階と2階が展示場であるらしい。さてさて、3階まで階段で行くが、3階の入り口に行くやいきなりの行列である。

 鈴木春信、歌川国貞、歌川豊春・・・・浮世絵師の作品が額縁に入れられて並べてある。それを人が囲むように凝視しているのであるが、浮世絵だけに一枚の絵の大きさはしれている。西洋の油絵の大作のように巨大なものはない。したがって、縦50cmもないし、横も3、40cmぐらいの小品ばかりである。それを多くの人が集るように観ているので、なかなか前に進まない。浮世絵というのは版画だけに、同じ絵柄の作品は世界中に散らばっているだろうが、それでも江戸時代に摺られた版画ばかりだから紙そのものが弱っている。だから館内の照明を暗くして、温度と湿度を一定に保って展示している。だから、作品も近付いて観なくては詳細まで窺い知れない。だからこれは参った。

 人が皆目、動かない。美術展には慣れきっているものの、人が多いときは確かに落ち着いて観れたものではない。平日に行けばいいものであるが、平日なんか行けない立場の者には、祝日や土、日に行くしか術がない。本当に困った。人垣の後ろから首を伸ばすようにして垣間見る始末。かつて日本から大量に海外へ持ち出された浮世絵が、こうして里帰りして展覧会を開くというのも妙だが、外国人によって評価され、それによって日本人が再評価するというのもこの国にはありそうだ。浮世絵は明治の初期には見向きもされなかったというから、時代によって随分と評価は違うものだ。そういえば、私の姪が言ってたが、伊藤若冲なんて絵師はアメリカ人によって評価され、最近は国内でもたいへんなブームだというから、日本人って案外、自分の足元を見ていないのかもしれない。外国の絵ばかり観る人が多いが、これからは今一度、日本古来の文化を見直すよい時期にきているのかもしれない。もう、既に西洋画はほとんど日本で紹介されつくしているだろう。門外不出というのは、規格外の大作か、寺院の壁に画かれたフレスコ画ぐらいのものではないだろうか・・・・・。これからは日本画を再認識する人が増えてくるように思う。これはいいことだ・・・・。

 さて、今回、喜多川歌麿を始め、歌川国芳、鈴木基一、渡辺崋山、といった珍しい浮世絵も多かったが、目玉は葛飾北斎の富嶽三十六景と歌川広重の東海道五十三次の版画展示だろう。北斎の富士の絵は、お馴染みの『神奈川沖波裏』『凱風快晴』である。『神奈川沖波裏』は記念切手にもなっているが、かつてドビュッシーが、その絵を観て作曲をしたというから、フランスの人にとっては度肝を抜かれるほど衝撃的で印象的な絵だったのだろう。『凱風快晴』は例の赤富士である。北斎の富嶽三十六景は計10点の展示であった。一方、歌川広重(安藤広重)は東海道五十三次、近江八景、面白いことに『摂洲天保山』を画いた作品まである。今の大阪天保山の姿を観たら、広重はあまりの変わりように仰天しそうだが、京都で終わらずに大阪まで出向いて浮世絵を残していたとは驚いた。

 さて、日本初公開163件あって、なるほどと感心しながら館を後にしたのであるが、いったいどれほどの浮世絵が海外に持ち出されたのか気になった。本当に明治維新というのは、日本の文化にとって良かったのかそれとも・・・・・・考えさせられる1日だった。
                                
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