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2008.04.28 (Mon)

ブラジル移民から100年

 今日、4月28日は、日本人のブラジル移民開始からちょうど100年目という記念日だという。1908年4月28日、神戸の波止場から170家族791人を乗せた移民専用船『笠戸丸』(約6000総トン)がブラジルのサントスへ向けて出発したのである。

 今時、集団で移民なんて考えられない時代だから、若い人はピンとこないだろうが、それは日本が100年の間に経済成長を成し遂げ(最近は斜陽国家の兆しもあるが)、国民が豊になったからであって、今さら移民するまでもないだろうが、明治の頃は貧しい二等国家だったといえばいいだろうか・・・・・。とにかく100年前の日本は発展途上もいいところで、遥か上の西洋列強諸国を拝んでいた状態である。最も昭和30年代でも、日本はまだまだ貧しかったものであるが、その頃でさえ、知らない人が増えている。物心ついた時、電化製品というのは裸電球と扇風機、ラジオぐらいだった現実を知っている私からするれば、確かに今の日本は物資文明に毒されていて、その有り難味も判らないようになっている。だから明治の日本の農村部が、どれだけ貧しいものであったかといわれても解らないと思う。実際、それは昭和生まれの私も解らない。

 さて、日本の移民は明治の初期に始まっている。最初はハワイや東南アジア、アメリカが中心であったという。でもアメリカで黄禍論が巻き起こり、アメリカへの日本人移民ができなくなってしまう。それに代わるのが南米移民であった。当初の渡航先はペルーであったが、それがブラジルへの移民が中心になっていく。

 何故かというと、ブラジルは1888年に奴隷制度を廃止したためにコーヒー農園の労働力不足が起こった。それでその労働力不足を補うためにヨーロッパから移民を受け入れたのである。でも劣悪な労働条件下だったがため、移民の不満を呼び、ドイツ、イタリアといった移民を送り出した国の政府が、奴隷のような労働を課せられては、移民を送ることに協力できないと出国を打ち切ったのである。

 困ったブラジル政府とコーヒー農園の経営者だったが、運よく『皇国殖民会社』が、アメリカ側から移民を締め出された日本人移民の送り込みを売り込んできたのである。こうして『皇国殖民会社』は、サンパウロ州政府と契約調印し、日本国内での移民希望者を集い、条件として・・・・・・移民は夫婦を中心に、12歳以上の兄弟を含む「3人以上の家族」であること・・・・・・・。こうして今から100年前の今日、ブラジル移民船『笠戸丸』が神戸港を出航したのである。

 『笠戸丸』は1ヶ月半後の6月18日、ブラジルはサントスの港に到着する。やがてブラジルの大地に入植した最初の日本人移民は、コーヒー農園で働くこととなる。過酷な労働条件であったが、ヨーロッパ人よりも生真面目で忍耐強く、それでいて粗食に耐えた日本人達・・・・・・・・。石川達三の小説『蒼茫』によると、「移民とは口実で棄民と言われていた」と表現しているが、それこそ酷い生活を強いられたという。

 それから100年、貧しさのために移民を決意し出国した人が多かった日本という国はすっかり豊になり、移民を受け入れたブラジルから、逆に出稼ぎ労働者が大勢来ている現実がある。もし、100年前にブラジルへ渡り、故国へ帰ることを夢見ていながら実現できず彼の地で亡くなっていった日系一世が、今の現況を知るとしたら何を思うだろうか・・・・・・・・。こうして見ると100年とはあまりにも長い月日である。その間に人も国も、何もかも変えてしまうのだ・・・・。現在ブラジルには日系6世までいるという。日系といっても現地の人や白人や黒人と結婚して、外見だけでは日系と思えないような人もいる。でも彼らも含めて約150万人の日系がいて、彼らはブラジル社会の大きな勢力になっている。それもこれも最初に渡った800人弱の頑張りがあったから今日があると思うと、ブラジル移民開始100年と一言で片付けられないような気がする。
                                                           
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