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2007.10.21 (Sun)

古い映画を観る・・・・・『戦艦ポチョムキン』

 地球上に映画というものが誕生して100年以上になる。それ以来、世界中で何万本、何十万本、いや、何百万本の映画が作られたか判らない。しかし、その無数の映画の中で映画史上において、絶対に観ていなくてはならない歴史上の映画というものが何本か存在する。こういった映画は、けして商業的ではなく観ていて何処が面白いのかと問われることが多い。でも映画の歴史を考えた場合、絶対に無視して通ることの出来ない映画なのである。それが、今回、紹介する映画である。それは『戦艦ポチョムキン』という無声映画である。

 『戦艦ポチョムキン』 ソヴィエト映画 1925年製作

 監督 セルゲイ・M・エイゼンシュテイン
 
 出演 アレクサンドル・アントノーフ
    グリゴリー・アレクサンドロフ
    ウラジミール・バルスキー

 【あらすじ】1905年の第一次ロシア革命前夜のことである。戦艦ポチョムキンの船上では、水兵が士官から蛆虫のわいた肉を食べるように命じられていたが、それに反感を持った一水兵ワクリンチェクは、みんなに呼びかけて蜂起する。水兵が一斉に反乱を起こし、それは成功した。ところが、士官の報復によりワクリンチェクは死ぬ。船はオデッサの港に到着、人々はワクリンチェクの死を悲しみ、ワクリンチェクの死体を取り囲み悲しみに沈む。しかし突如として銃声が鳴り響き、政府軍の一斉射撃が始まり、群集は逃げ惑うこととなる。オデッサの階段を人々は転がるかのように・・・・・・・。革命の火種を巻き起こすこととなったポチョムキンの反乱に題材をとった、歴史的作品である。

 日本では戦前、共産主義のプロパガンダが含まれているとみなされ、政府の検閲にひっかかり上映禁止となった。この映画が、日本の映画館で一般に公開されたのは、何と戦後22年経った1967年のことである。当然のように、ソヴィエト共産主義の国策映画なので、政治色が強い映画であることは歴然としている。でも何故、この映画が歴的価値があるのかというと、それはモンタージュ手法を確立した映画として世界の映画関係者から絶賛を浴びているからなのである。

 モンタージュ論とは、バラバラに撮影されたフィルムのカット(断片)を繋ぎ合わすことによって意図する表現効果、映像効果、芸術効果を生み、一つの作品として纏め上げることを広義の意味として理解してもらえればいいと思うが、エイゼンシュテインは、カットをモンタージュのための断片ではなく、映画の一部の細胞と考え、その結合が生む衝突の意味を重視して自分で弁証法的モンタージュ理論を考察したのである。

 このように言うと、何か難しく思われそうだが、今の映画は何らかの形で、エイゼンシュテインの手法を踏襲しているので、この『戦艦ポチョムキン』を観てもさほど驚くことはない。でも、この映画が製作されたのは1925年である。日本で言うならば大正14年であるが、まだ17コマの映像が中心で、もちろん映像に音はない。そのことを考えるならば、この映画の持つ意味がどれほど大きいか理解できると思う。

 後年、映画が24コマになり、音が出るようになり、映像がカラーへと成長を遂げた。それにより映画の表現方法が飛躍的に向上したことは言うまでもないが、今から80年以上前に、エイゼンシュテインはモノクロの音のない映像だけで、訴えたいことを見事に表現しているのである。この映画の場合、あらすじがどうのこうの、当時の時代背景がどうだの、そんなことはどうでもいいのである。とにかく映像の表現力が出色で、革命的だったのである。中でも『オデッサの階段』と言われる6分間の映像は、「映画史上最も有名な6分間」とされ、特に撃たれた母親の手を離れた乳母車が階段をカタンコトンと落ちていくシーンは圧巻である。映画通は、この映画を観ずして映画を語ることなかれ・・・・。絶対に観るべき作品である。

『戦艦ポチョムキン』のオデッサの階段の場面。この映像ではレッド・ツェッペリンの『天国の階段』がBGMに流れているが、かつて私が観た時は、ショスタコーヴィチの交響曲第5番~第1楽章が流れていた。
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