uncleyieのア・デイ・イン・ザ・ライフ

　私はジャズを聴くといってもコンボ主体で聴いているので、ビッグバンドはほとんど聴かない。ビッグバンドが嫌いというのでもないが、不思議と聴くのは小編成のコンボが奏でるジャズ演奏が多い。でもビッグバンドを聴かなくして、ジャズを語るなかれと小言でも言われそうなので、ここらでカウント・ベイシーのことでも書こうかと思ったのだが・・・・・・。そもそもジャズというのは、ディキシーランドから始まって、やがてアメリカを北上、色々な変遷を経てニューヨークに到達するが、この頃にはジャズというものがアメリカ社会での市民権を得ていて、数多くのバンドやプレイヤーを生み出している。ルイ・アームストロング、デューク・エリントン、ポール・ホワイトマン、トミー・ドーシー、ビング・クロスビー、グレン・ミラー、アーティー・ショウ、ベニー・グッドマン・・・そんな中に当然、カウト・ベイシーも入っていた。

　この1930年代あたりになるだろうか、多くのビッグバンドがニューヨークを中心として活躍していたのは・・・・。世界大恐慌からようやくアメリカが立ち直り始めた1930年代中頃、ジャズがメジャーな音楽として認知され始め、ポピュラリティーを取り込むことで、ジャズは最早マイノリティーの音楽でないことを世間に示し、大衆音楽の仲間入りを模索していたように思える。この当時、アメリカはラジオの普及もあり、より判り易い音楽を求めていたのではないだろうか。1929年に起こった大恐慌から経済は冷え切り、人々が音楽に癒しを求めていた時期でもある。そんな中で判り易い音楽とメロディが人の心に入り込んでいくことをと演奏者は知っていた。また、普及したラジオにより情報の地域格差がなくなりつつあったので、一般受けするスタンダード曲が求められている時代でもあった。

　このような時代にいち早く対応したのがジャズというジャンルの音楽であり、彼らの多くが、この頃にビッグネームを確立していったのであった。彼らはビッグバンドとして名声をあげ、バンドリーダーなどは名士として社交界でも引っ張りだこだったに違いない・・・・・・？　でもビッグバンド全盛のこの時代、白人バンドの方が多くて、黒人のビッグバンドとしてはデューク・エリントンと、このカウント・ベイシーぐらいが大物バンドではないだろうか。

　カウント・ベイシーは1904年、ニュージャージーに生まれる。ピアノを母に教わり、20歳でブルース・シンガーの伴奏やピアノ・ソロの奏者として、すでに稼いでいた。その後、ウォルター・ペイジ率いるブルー・デビルズに参加、1929年にベニー・モーデン楽団に加わる。1935年にバンドリーダーのベニー・モーデンが死去。すると自らバンドリーダーとして改組する。1936年にはニューヨークへ活動の拠点を移し、カウント・ベイシー・オーケストラとして発足するのである。

　ここからカウント・ベイシー楽団は、カウト・ベイシーが癌で亡くなる1984年まで、彼を中心に活動を続けていた。でも、彼の死後もカウント・ベイシー楽団は存在し、演奏活動を続けているのである。

　ところでこのアルバムの挿入曲は『明るい表通りで』『ブルー・レディに紅いバラ』『ムーングロウ』『センチになって』『レディ・イズ・ア・トランプ』『スウィート・ロレイン』『時間通りに教会へ』ホエン・サニー・ゲッツ・ブルー『デイ・イン・デイ・アウト』『ゴースト・オブ・ア・チャンス』『浮気はやめた』『イフ・アイ・ワー・ア・ベル』『ジョーンズ嬢に会ったかい』『魅惑されて』『アイヴ・ガット・ザ・ワールド・オン・ア・ストリングス』『アズ・ロング・アズ・アイ・リヴ』『ドント・ウォーリー・バウト・ミー』『時さえ忘れて』の18曲。

　スタンダード・ナンバーも幾つか含まれているが、カウント・ベイシーの音楽は難しくない。とにかくスウィング・ジャズの象徴といってもいいような音作りである。よくデューク・エリントンと比較されがちだが、エリントンよりも判り易い。とにかくジャンプするようなスウィングが特徴で、聴いていると心が鼓舞すること間違い無しである。最後にカウント・ベイシー楽団の代表曲は『ワン・オクロック・ジャンプ』『エイプリル・イン・パリ』である事を付け加えておこう。

カウント・ベイシー楽団による演奏『One O'Clock Jump』