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2009.10.22 (Thu)

ジイド・・・・・『狭き門』を読む

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  『狭き門』は~力を尽くして狭き門より入れ。滅びにいたる門は大きく、その路は広く、之より入る者多し。生命に至る門は狭く、その道は細く、之を見いだす者少なし《ルカ福音書13章24節》~からきている

 幼くして父を亡くしたジェロームは少年時代から夏になると叔父の家で過ごす。叔父の家にはアリサ、ジュリエットという姉妹がいる。姉のアリサは物静かで、ジュリエットは活発であったジェロームと姉妹は実の兄妹のように遊びながら成長する。そんな成長過程の中で、ジェロームは次第にアリサへ恋心を抱くようになる。一方、アリサもジェリームのことを慕ってはいたが素直に受け入れることが出来ずに悩んでいた。アリサの母は彼女が推さない時に父親以外の男性と親密な関係に陥り、家を出て行ってしまったことから、アリサは母の恥ずべき行為を反面教師として男女関係というものに敏感になっていて、天上の愛を求めるようになっていたからである。またジェロームはそのようなアリサの心の奥を知り己も清く正しくありたいと願っていた。が、日々が経過するにしたがってアリサへの思いは大きくなり悩み苦しむのだった。そんな時、アリサは妹ジュリエットがジェロームに好意を抱いていることを知る。アリサは自分が身を引いてジュリエットにジェロームを譲ろうと考えるが、ジュリエットも気遣ってかなり年長の男性と結婚することに決める。

 数年後、フランスを離れていたジェロームが戻り、アリサを忘れられないジェロームは求婚する。だがアリサは取り合わない。それから3ヶ月後、ジェロームはアリサが亡くなったことを聞き、アリサの日記の存在を知る。その日記にはジェロームに対する思いが綿々と綴られていたのである。

 この小説をただの純愛小説と片付けることは出来ないのは、ジイドの作品中で唯一プロテスタントの風貌を備えるものと言われることが所以であるとされる。地上の恋を捨て、ただひたすら天上の愛を求めるアリサが物語の中心にいることは、敬虔なキリスト教徒の支配が強い風土を謳歌しているという向きもあるものの、一方でジェロームのような異性に恋心を抱き続け、一般的な愛の成就に結論を求めようとする心の動きも描ききっている。
この話はジイドの従妹であったマドレーヌがモデルになっているとされるが、現実にはマドレーヌ自身、ジイドの妻となっているから、小説と現実とではいささか食い違いが生じるものの、『狭き門』がジイドの半自伝的小説と呼ばれるのも、ある程度は納得できるのである。マドレーヌは母の不義によって心に痛手を負っていて結婚生活に極度の恐れと不信を抱いていたと思われる。結局、ジイドの熱心な求婚に心が動き、2人は結婚する。しかしけして2人は求めあう結婚生活ではなかった。

 ジイドの死後に出された『秘められた日記』によると、ジイドは同姓愛の趣味があり、結婚当初も性欲に対して無感覚で、マドレーヌのような清純な女性は肉体的欲望がないと考えていた。一方、マドレーヌは夫の欲望の欠如は自分に魅力がないからだと思い込み、人前に出ないという生来の傾向をさらに強めていくのであった。このようにして不自然な夫婦の関係でありながら、マドレーヌはジイド夫人として処女妻としてこの世を去るのである。結局、マドレーヌはジイドの創作作品の中で大きな位置を占めるにいたり、彼の著作においてマドレーヌが濃い影を落としているというのは明確であった。

 ジイドはプロテスタントの家庭に生れたが、次第と左翼思想へと傾倒していき共産主義者となる。その裏には現在のキリスト教に対する反発があったとされるが、真に理解された個人主義は共同体に奉仕すべきであるとして、彼は自分が自由に生きる世界を共産主義に求めたのだ。だが、現実のソビエトを訪れてみて、共感から批判に一転し、徐々に肩肘張った部分がとれていったものと考えられるが、晩年、ジイドはマドレーヌを失ってから彼女の存在の大きさを知るのである。ところがその間、思想の二転三転、同姓愛問題、エリザベート。ヴァン・アレグレとの肉体関係等、色々とあり、生涯においての妻マドレーヌを失ってから、その至上の愛の大きさを実感することになったのだろう。『狭き門』に登場したアリサとジェロームムとの関係は、彼の思想の中で考え得る最高の愛の形であるとするならば、現実に生きたジイドとマドレーヌとの関係は何だったのだろうかと深く探求すると、彼の言わんとする男女関係は自ずと答えが出ているような気がするが・・・・・・。
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