2010.04.20 (Tue)
ラヴェル・・・・・『ピアノ協奏曲 ト長調』を聴く
ラヴェル 『ピアノ協奏曲 ト長調』
サンソン・フランソワ(ピアノ)
指揮 アンドレ・クリュイタンス
パリ音楽院管弦楽団

モーリス・ラヴェルというと『ボレロ』が余りにも有名だが、真髄はピアノ曲だと思う。19世紀においてピアノの曲はほぼ完成しているが、20世紀における現代ピアノ音楽の確立はドビュッシーをラヴェルの2人によって成されたのではないだろうか。そんなラヴェルの協奏曲ト長調は『ボレロ』を作曲した3年後の1931年に完成している。
ラヴェルは1927年から1928年にかけてアメリカへ演奏旅行に行って成功を収め、再度の渡米を考えていた時に、自分で演奏する曲をという意図のもとに作られた曲である。2度目のアメリカ演奏旅行は結局、ラヴェル自身の健康上、その他の理由で実現しなかったが、初演はラヴェル自身のピアノではなく、ラヴェルは指揮棒をふり女流ピアニスト、マルグリット・ロンのピアノとラムルー管弦楽団によって行なわれた。
全3楽章、20ほどの曲だが、全体的に19世紀のロマン派とは区別されるべきピアノ協奏曲といってもいいだろう。第1楽章の始まりから鞭が一閃。そこから軽快なリズム。一転してピアノのアルペジオ。何とも風変わりなピアノ協奏曲である。やや東洋風の旋律をも醸しつつ、流石にオーケストレーションの大家らしく際立ってカラフルな曲である。楽器編成もピッコロ、フルート、オーボエ、コーラングレ、クラリネット、ファゴット、ホルン、トランペット、トロンボーン、ティンパニ、大太鼓、小太鼓、シンバル、タムタム、トライアングル、ウッドブロック、鞭、ハープ、そしてピアノとと多岐にわたっていて大編成ではないが、色彩豊な音色を奏でる曲といってもいい。ラヴェル自身は書簡でモーツァルト、サン=サーンスと同じような美意識で書いたといっているが、第2楽章がモーツァルトのクラリネット五重奏曲に感化されたというだけあって中間部の木管楽器がそれを彷彿とさせる。
曲調はアグレッシブであり古典的なところもあり、一言でいい表せないが、当時の最先端の音楽であったジャズの要素を各所で取り入れていて、第1楽章のピアノとホルンとフルートでの協奏部分がジャズのブルースを連想させるし、19世紀の音楽と違って色々な要素を含みつつ、ラヴェル自身の解釈によってラヴェルでしか出来ないピアノ協奏曲を書き上げたのである。
時代から言ってもちょうど日本で言うと、昭和の初期にあたり世界各国で色々な音楽が影響を受け合った時代でもあり、ラヴェルは当然のようにアメリカのジョージ・ガーシュウィン作曲の『ラプソディ・イン・ブルー』に驚いただろうし、事実、その後にガーシュウィンから教えを請われている。でもラヴェルは「あなたは既に一流のガーシュウィンなのだから二流のラヴェルになる必要はない」とまで言っている。そんなお互いが影響を受け合った時代に作曲されたラヴェルのピアノ協奏曲ト長調である。この曲は色んなエッセンスとスパイスが混じりあった20世だからこそ出来上がった曲なのである。でもこの曲の第3楽章の終盤、日本の映画『ゴジラ』のテーマとよく似たメロディが繰り返されるが、まさか伊福部昭が引用したということはないだろうなあ。
ラヴェル 『ピアノ協奏曲 ト長調』の演奏(第1楽章)
ミケランジェリ(ピアノ)
指揮 セルジュ・チェリビダッケ
ロンドン交響楽団(1982年4月8日) 盟友の共演。
サンソン・フランソワ(ピアノ)
指揮 アンドレ・クリュイタンス
パリ音楽院管弦楽団

モーリス・ラヴェルというと『ボレロ』が余りにも有名だが、真髄はピアノ曲だと思う。19世紀においてピアノの曲はほぼ完成しているが、20世紀における現代ピアノ音楽の確立はドビュッシーをラヴェルの2人によって成されたのではないだろうか。そんなラヴェルの協奏曲ト長調は『ボレロ』を作曲した3年後の1931年に完成している。
ラヴェルは1927年から1928年にかけてアメリカへ演奏旅行に行って成功を収め、再度の渡米を考えていた時に、自分で演奏する曲をという意図のもとに作られた曲である。2度目のアメリカ演奏旅行は結局、ラヴェル自身の健康上、その他の理由で実現しなかったが、初演はラヴェル自身のピアノではなく、ラヴェルは指揮棒をふり女流ピアニスト、マルグリット・ロンのピアノとラムルー管弦楽団によって行なわれた。
全3楽章、20ほどの曲だが、全体的に19世紀のロマン派とは区別されるべきピアノ協奏曲といってもいいだろう。第1楽章の始まりから鞭が一閃。そこから軽快なリズム。一転してピアノのアルペジオ。何とも風変わりなピアノ協奏曲である。やや東洋風の旋律をも醸しつつ、流石にオーケストレーションの大家らしく際立ってカラフルな曲である。楽器編成もピッコロ、フルート、オーボエ、コーラングレ、クラリネット、ファゴット、ホルン、トランペット、トロンボーン、ティンパニ、大太鼓、小太鼓、シンバル、タムタム、トライアングル、ウッドブロック、鞭、ハープ、そしてピアノとと多岐にわたっていて大編成ではないが、色彩豊な音色を奏でる曲といってもいい。ラヴェル自身は書簡でモーツァルト、サン=サーンスと同じような美意識で書いたといっているが、第2楽章がモーツァルトのクラリネット五重奏曲に感化されたというだけあって中間部の木管楽器がそれを彷彿とさせる。
曲調はアグレッシブであり古典的なところもあり、一言でいい表せないが、当時の最先端の音楽であったジャズの要素を各所で取り入れていて、第1楽章のピアノとホルンとフルートでの協奏部分がジャズのブルースを連想させるし、19世紀の音楽と違って色々な要素を含みつつ、ラヴェル自身の解釈によってラヴェルでしか出来ないピアノ協奏曲を書き上げたのである。
時代から言ってもちょうど日本で言うと、昭和の初期にあたり世界各国で色々な音楽が影響を受け合った時代でもあり、ラヴェルは当然のようにアメリカのジョージ・ガーシュウィン作曲の『ラプソディ・イン・ブルー』に驚いただろうし、事実、その後にガーシュウィンから教えを請われている。でもラヴェルは「あなたは既に一流のガーシュウィンなのだから二流のラヴェルになる必要はない」とまで言っている。そんなお互いが影響を受け合った時代に作曲されたラヴェルのピアノ協奏曲ト長調である。この曲は色んなエッセンスとスパイスが混じりあった20世だからこそ出来上がった曲なのである。でもこの曲の第3楽章の終盤、日本の映画『ゴジラ』のテーマとよく似たメロディが繰り返されるが、まさか伊福部昭が引用したということはないだろうなあ。
ラヴェル 『ピアノ協奏曲 ト長調』の演奏(第1楽章)
ミケランジェリ(ピアノ)
指揮 セルジュ・チェリビダッケ
ロンドン交響楽団(1982年4月8日) 盟友の共演。
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2010/04/21(水) 16:08:29 | 続無知の知
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