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2012.07.08 (Sun)

マイルス・デイヴィスのアルバム『マイルストーンズ』を聴く

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 モダン・ジャズの最初はチャーリー・パーカーやディジー・ガレスピーがやりだしたビ・バップだと一般的に言われているが、それらをさらに発展させ、クール・ジャズを生みだしたのがマイルス・デイヴィスだと言われる。そもそもチャーリー・パーカーのバンドのサイドマンでもあったマイルス・デイヴィスである。ビ・バップそれまでのスウィング・ジャズに比べると即興的要素が強いので、よほど才能ある奏者でしか優れた演奏を続けることは難しかった。そういた問題点に気付きアレンジの要素も加えた新しい9人編成のグループを結成する。マイルス・デイヴィスの9重奏団の奏でる音はビ・バップに比べるとクールに聴こえるのでクール・ジャズとも言われた。クール・ジャズはマイルス・デイヴィスから始まったものとされるが、後には白人が主に好んだ。さて、このアルバム『マイルストーンズ』だが、クール・ジャズの誕生から早9年。この頃のマイルス・デイヴィスは何を模索していたのだろうか・・・。クールが鳴りを潜めたというよりもモード・ジャズがこのアルバムからだと言われる。このアルバムが出た1958年はクインテットやシクステットを組んでいた頃だろうか。メンバーもマイルス以外だとジョン・コルトレーン(ts)、レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリップ・ジョー・ジョーンズ(dr)、キャノンボール・アダレイ(as)で、その後に名声を確立した連中がなを連ねる。お互いまだ若く活きのいいサウンドが奏でられる。収録されている1曲目の”Dr. Jackle”からして熱い。速いテンポの曲で小刻みなリズムを刻む。2曲目”Sid’s Ahead”は一転して緩いテンポの曲だが、面白いことにピアノを弾いているのが何とマイルス・デイヴィス。それだけに聴きもの一曲である。何故にマイルス・デイヴィスがピアノを弾く羽目になったのか・・・・。実はポール・チェンバースが遅刻をしたからである。結局、この後にポール・チェンバースはマイルス・デイヴィスの下から去る運命に。3曲目は”Two Bass Hit”は軽快なテンポと軽いタッチでノリがいい。

 このアルバムでの聴きどころはやはりタイトル曲の”Milestones”だろう。4曲目に入っているので違和感があるだろうが、5分余りの曲で長くはないのだが、小気味いいサックスのリズムからマイルスの軽快なトランペットが優雅に堂々と奏でられる。そして目立ちはしないがポール・チェンバースのウォーキング・ベースがズンズンと実に心地よく響く。そして当時、珍しかったフェイドアウトでこの曲は終わる。このあたり1950年代の録音とは思えないほどだ。尚、5曲目の”Bill Boy”はガーランド・トリオの演奏なので割愛する。6曲目は”Straigt,No Chaser”はセロニアス・モンクの曲であるがマイルス・デイヴィスを中心に迫力でもってぐんぐんと迫ってくる。サックスもピアノもいい。やはりマイルス・デイヴィスがいいから全体的に演奏も引き締まる。緊張感の中にも自由度があって実にいい。

 先ほど、この頃のマイルス・デイヴィスは何を模索していたのかと書いたが、マイルスはギル・エヴァンスと協力してスペイン音楽を手掛かりにアドリブの自由化目指した音列によりモード・ジャズを創造したのであった。こうして50年代末から60年代にかけてモード(音列)ジャズの先導者としてジャズ界を牽引することになるのだが、その後、ロックの台頭によりジャズも変わることとなるが、そういった時代にあってもマイルス・デイヴィスはエレキサウンドやロック・ビートを取り入れるなど常に時代とマッチしているトランペッターでもあった。なので当然、スウィングからビ・バップ、ハード・バップを時代が進む中にあって時代の寵児でありつづけたことは特筆すべきことである。


 マイルス・デイヴィスの演奏する『マイルストーンズ』(動画はなし)


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