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2013.09.23 (Mon)

オーネット・コールマンのアルバム『ジャズ来るべきもの』を聴く

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 このアルバムが録音されたのは1959年5月のことである。アルトサックスがオーネット・コールマン、ドン・チェリーがコルネット、チャーリー・ヘイデンがベース、ビリー・ヒギンスがドラムス。最初にこのアルバムを聴いたのは20歳頃のこと。もうかなりジャズを聴きこんでいたと思うが、最初に聴いたときは随分と違和感があったように思う。当時、小生はモダン・ジャズのコンボばかりを聴いていたが、それまでのビ・バップ、ハード・バップ、クール・ジャズ、モード・ジャズとは一線を画していたのはすぐに判った。でも当時、ジャズの歴史もあまり詳しくなく、このアルバムがフリージャズと言われていることも知らなかった。とにかく聴いて最初は不快な感じがしたのを覚えている。初めて聴いたときは既に、このアルバムがリリースされてから15年ほど経っていたと思うが、このようなアルバムが存在することを知らなかった。とにかく不思議なジャズがあるものだという当時の感想である。それは何故かというとピアノがまず入ってない。サックスとコルネットが全面に出ていて、バックのベースとドラムスが小刻みにビートを刻む。何とも言えぬ雰囲気があった。それまで聴きこんでいたマイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーンとは明らかに違っていた。ただし聴いていて心地よいという感じはしなかった。所謂、これがフリージャズというものだと知るのはその後のことであるが・・・・。

 オーネット・コールマンは1930年3月、テキサス州フォートワースに生まれた。14歳の時に買ってもらったアルトサックスを独習した彼は、近所の仲間とバンドを組んでナイトクラブに出演するようになる。20歳でロサンジェルスに行くもののなかなか仕事にありつけず、職を転々としながら独学で音楽理論を追求する。そして1958年に最初のアルバム『サムシング・エルス』を発表。その翌年、当作品の『ジャズ来るべきもの』をリリースしたのである。最初の曲『ロンリー・ウーマン』からコールマンのアルトサックスとドン・チェリーのコルネットガ前面に出て定型的なコード進行の制約から逃れ、楽曲の構成も従来の手法から離れ、自由度の高い演奏を繰り広げることで成し得た演奏であるがが、サックスとコルネットガ微妙にずれたことで不協和音が醸し出す不思議な曲である・2曲目の『イヴェンチュアリー』は一転して激しいリズムと共に、ビ・バップから脱却した自由なアルトサックスが高速でメロディを奏でるが、最早メロディと言えるのか・・・・。このアルバムが録音された時期はハードバッブ後期、マンネリを打破する為のモード奏法や、さらにはファンキー・ジャズ何て言う代物も出回っていた。でもそれらはしっかりとアレンジされ、演奏のスタイルがある程度読めたものであるのに対し、このオーネット・コールマンのバンドがやった試みは当時としては理解の範囲を逸脱していたものだろう。この頃によりジャズはより自由度を増したと言っても過言ではないが、マイルス・デイヴィスはこのフリージャズを認めていなかったらしい。

 時代の変革期というものはそのようにして始まるものだろうが、チャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピーから始まったスウィング・ジャズの破壊からモダン・ジャズが誕生した当時は簡単に受け入れられなかっただろう。そこでビ・バップ、ハード・バップといった戦後のモダン・ジャズの隆盛が始まるのだが、それも1950年代も末期にして必然的にフリージャズという物が生まれたのかもしれない。その後、これらから前衛ジャズへと波及していくのだろう。その転換期にあったのが当アルバムである。

 ただ聴いていて心地よいかというと小生は疑問符を打つ。20世紀の音楽は破壊と創世の歴史だが、シェーンベルクなんていう調性を脱し無調音楽に入り12音技法を生みだしたが、これなんか不協和音が多く、けして大衆受けする音楽ではなかった。その当時から大きく時代は進みジャズの世界でも変革期が幾つかあり、このオーネット・コールマンが試みた音楽もそれに近いところである。聴いていて不協和音が多く、それまでのジャズとは違っているのが判る。要するにコールマンとドン・チェリーのコンビで繰り広げられている音楽は謂わば、チャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピーの再来のようなものであるかもしれない。実際にはバップをさらにデフォルメし抽象化しグロテスクにした。でもその後の前衛ジャズに比べると随分と古典的に聴こえるのだから、慣れというのは恐ろしい。つまり基本的にジャズのスタイルは崩してなく、今聴きなおすと初めて聴いた時ほど驚くこともない。それほどジャズというのは自由度の高いジャンルの音楽なのだということである。


 オーネット・コールマンの『Lonely Woman』静止画のみ



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