2013.09.29 (Sun)
ザ・ビーチ・ボーイズのアルバム『ペット・サウンズ』を聴く
この『ペット・サウンズ』というアルバムはザ・ビーチ・ボーイズにとって11枚目のアルバムになる。その当時、ビーチ・ボーイズというのは調子のいいサーフィン音楽が主流の曲が多く、音楽的に余り認められてなかったように思う。『サーフィンUSA』『ファン・ファン・ファン』『アイ・ゲット・アラウンド』『サーファー・ガール』何て言う馴染みのある曲があったが、日本で言う湘南サウンドのような音楽であった。もっともビーチ・ボーイズの中心的人物であるブライアン・ウィルソンは南カリフォルニアの出身でサーフィン・ミューシックの申し子でありながら海が怖くてサーフィンなんて一度もやったことがないらしい。この辺りが日本の加山雄三とは大きく違っているところである。
さて、ビーチ・ボーイズというとまず1963年のヒット曲『サーフィンUSA』が挙げられるが、この頃と当アルバム『ペット・サウンズ』は趣が大いに違っている。謂わばそれまでのザ・ビーチ・ボーイズと違っているのだ。最も小生はこの『ペット・サウンズ』がリリースされた1966年頃というのはビーチ・ボーイズなんてあまり興味もなく好きでも嫌いでもなかった。それが同じ年、『グッド・バイブレーション』を聴いて認識が大きく変わったことを覚えている。初めて聴いたとき、「ええ、ビーチ・ボーイズがこんな音楽を作るの」という驚きだった。それは良い方に期待を裏切ったということである。それまでどうでもいいと思っていたビーチ・ボーイズが、この曲で認識が変わっってしまったのである。ちょうどその頃にアルバム『ペット・サウンズ』が出ていたのだろうが、当時はビートルズばかり聴いていたので、ビーチボーイズのアルバムまで手が回らずというところであった。当時はまだ12歳かそこらだったからアルバムなんて当然のように高価なものは買える筈もない。せいぜい小遣いを貯めてシングル盤を買うのが関の山であった。
結局、この『ペット・サウンズ』を全曲聴くのは何と小生が社会人になってからであった。つまりアルバムがリリースされてから10年以上経ていた。それも友人の持っていたものを聴いただけである。ただ風変わりな曲が多いというのと、小学生の頃に聴いていたビーチ・ボーイズ・サウンドというものとは違っていたということである。でもその時はあまり印象に残ってなかった。つまりこのアルバム『ペット・サウンズ』を意識するようになったのは恥ずかしながら、CD時代になって当アルバムを聴きこむようになってからである。要するに20年ほど前のことである。
ビーチ・ボーイズというのはブライアン・ウィルソン、デニス・ウィルソン、カール・ウィルソンの三兄弟が中心メンバーで、後は時代によってメンバーが入れ替わっているのも全時代を通じて興味が持てなかった理由だろう。ただ曲自体はブライアン・ウィルソンが大半を書いていたように思う。それでこの『ペット・サウンズ』がビーチ・ボーイズのビーチ・サウンドから何故に変革したのかというのは、ビートルズの『ラバー・ソウル』に影響をされたからだという。そこでブライアンはそれまでのツアーを辞めスタジオにこもって新しい音楽を模索し、スタジオ・ミュージシャンと共にソロに近い形で録音したという。これはまさしくビートルズが行ったことと同じ試みであった。それでブライアンはビーチ・ボーイズとして本来から定評のあった美しいハーモニーに加え、オルガン、ハープシコード、フルート、自転車のベル、テルミン、犬笛等を駆使してダビングを繰り返し録音している。したがって他のメンバーはヴォーカルおよびコーラスのみとなっている。曲は13曲。この中には『Let’s go away for awhile(少しの間)』『ペットサウンズ』のようなインスルメンタル曲も入っている。
それでこのアルバムが1966年にリリースするわけだが、それまでのビーチ・ボーイズのサウンドとは食い違っていたのかファンはとまどい売り上げの方は芳しくなかったし酷評もされたらしい。結局、此の事がその後のブライアン・ウィルソンの心の傷となって蝕むことになるのだが・・・・・・。でも、このアルバムは玄人筋に評価され、特にビートルズのポール・マッカートニーは影響を受けたと言い、翌年になってあの大傑作『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』を生むことになる。ということはビーチ・ボーイズは商業的に成功していたサーフィン・サウンドの頃よりも商業的に成功しなくても『ペット・サウンズ』でこそグループの評価が高まったという皮肉なことになる。
それで今でもビーチ・ボーイズはメンバーを入れ替えて活躍しているのであるが、ほぼブライアン・ウィルソンのバンドと言ってもいいだろう。ブライアンあってのグループであり、ブライアンあっってのビーチ・ボーイズなのである。そこがジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スター誰が欠けてもビートルズとは言えないのとは大いに違っていたということである。一時、ビーチ・ボーイズなんて言うのはグレン・キャンベルまで加わっていたぐらいだ。なので小生もビーチ・ボーイズのメンバーが時代によって、誰が加わっていたのかもよく知らない。ただ絶えず中心にいたのがブライアン・ウィルソンだったということには変わりはない。
『Wouldn't It Be Nice(素敵じゃないか)』を演奏するザ・ビーチ・ボーイズ(1971年)
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