2007.09.25 (Tue)
千の風になって
最近、私の母が、何度も繰り返し聴いている歌がある。それが『千の風になって』である。ご存知のように昨年の末のNHK『紅白歌合戦』で、テノール歌手の秋川雅史が歌ってブレークし、ミリオンセラーになった曲である。私は時代の流行に乏しい性質なので、その歌が流行っていることも知らず、聴いたこともなかった。それで最近、私の母がいい歌があると言っていたのを思い出し、尋ねてみたら『千の風になって』であった。
それが縁で、このほど『千の風になって』の曲のことを色々と調べてみた。すると『千の風になって』という曲に纏わる色々な事象が判って来た。それは、原詩があって作者は不詳だということ。その原詩を新井満が訳詩して自ら作曲し歌ったこと。結局はこれがオリジナルであり、以降、新垣勉、秋川雅史、中島啓江、宗田舞子、オユンナ、Yucca・・・・競作になったこと等である。ところが、さらに調べていくと作者不詳といわれているが、諸説あって、一番有力なのはアメリカ女性メアリー・エリザベス・フライという人の詩がもとになっているということ。
それはメアリー・フライさんの友人のユダヤ系ドイツ女性マーガレット・シュワルツコップという人が、ナチス・ドイツからアメリカに亡命して来た際に、ドイツに残して来た母の訃報を知り悲嘆にくれていた。その時、友人を慰める意味で、この詩が生まれたという。結局、この話が一番有力な説とされ、『Do not stand at my grave and weep』の詩を、新井満が訳して作曲した歌が記録的なヒットとなったのである。
この歌の中で I am a thousand winds that blow を千の風になってと訳したのは新井満であるが、千の風というのは何のことだろうか・・・・・。意味が解り辛いが、とにかく巨大な風になって吹き渡っているといった心理を、切実に訴えている歌詞の内容になっているようだ。
日本では、この歌が、太平洋戦争で主人を失った遺族の言いようの無い無念さにマッチしたのか、戦争未亡人を中心にCDが売れ始め、長いロングセラーとなったようである。そんな何人かの競作の中で、秋川雅史が『紅白歌合戦』に出場したことにより、一気にブレークしミリオンセラーとなった。
私がほとんど知らなかったこの歌。よくよく聴いてみると旋律といい歌詞の内容といい、確かにヒットする要素は持っている。このところの横文字の羅列ばかりでメロディラインが明確で無い、リズムばかりがフューチャーされるヒット曲の中では異彩を放っている。この曲が年配者を中心に人気が出たことは必然的なものだったということが、何度か聴いているうちに容易に理解出来るのであった。
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