2008.12.04 (Thu)
ハービー・マンのアルバムを聴く『at the village gate』

フルートという楽器はジャズの曲には皆無だと思っている人が、最近、ジャズを聴きだした人の中には多いように思うが、1960年代から、70年ぐらいにかけて、ハービー・マンが大人気だった時期がある。・・・・と言ってハービー・マン?・・・・と問われると返答に困るが、その昔、日本でとても人気のあったジャズ・フルート奏者といえば納得いくだろうか。
1930年、ニューヨークのブルックリン出身。ユダヤ系の裕福な家庭に生まれ、6歳でピアノ、9歳でクラリネットを学ぶ。18歳からの陸軍生活でテナー・サックスを学び、22歳でアコーディオンのマット・マシューズのグループに入ってからフルートを始めたという変り種である。彼はその後、1959年にアフロキューバンのエキゾチックな要素を組み込んだユニットを結成して、アフリカ・ツアーを実現した。さらには、1962年ブラジルを訪れ、ボサノヴァをアメリカに持ち帰り、そのときに出したアルバムが『at the village gate』である。
当アルバムは、1962年12月に録音されたもので、収録曲は3曲。『Comin' Home Baby』『Summertime』『It Ain't Necessarily So』・・・・この中で、最初の曲『カミン・ホーム・ベイビー』は、ベース奏者ベン・タッカーの作曲によるもので、当アルバム収録の時も、本人がベースを担当しているが、ジャズの曲としては大ヒットしたナンバーである。当然のように日本でもヒットして、日本のジャズメンが矢鱈とコピーしたものだから、私も知っていたほどの曲である。昔、LP盤で聴いた頃は、A面が『カミン・ホーム・ベイビー』と有名な『サマータイム』が入っていて、B面に『イット・エイント・ネセサリー・ソウ』なので、あの頃のジャズ喫茶では、A面だけがよくかかっていたという覚えがある。とにかく人気曲でアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズの『モーニン』と双璧と思うぐらいあの頃のジャズ・シーンで聴かれた曲であった。
ただ、ジャズ・フルートというジャズでは珍しい楽器をフューチャーしていることもあり、根っからのジャズ・ファン以外の人までが耳を傾けたということはいえるだろう。とにかくハービー・マンは、フルートという上品、可憐な楽器を駆使し、大衆がジャズに抱くイメージに沿った荒々しい音色で、音楽のジャンルを打ち破ったジャズメンと言えるかも知れない。このアルバムで日本にも名前が知れ渡ることになったハー・ビー・マンは、60年代後半、ロックの要素を取り入れてジャズ・ロックと呼ばれるクロスオーヴァーやフュージョンの先駆けとなる音楽を手がけ、70年代にはレゲエを取り入れたアルバムを発表している。こうした試みがジャズの歴史の中でムーヴメントとなったことは言うまでも無いが、当時のジャズ・フアンからは、必ずしも正当な評価を受けてなっかたように思う。だから、ハービー・マンが最近になって再評価されていると聞くと嬉しく思うのである。
『カミン・ホーム・ベイビー』の演奏。音声のみ。
『メンフィス・アンダーグランド』を演奏するハービー・マン・セクステット。
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