2007.12.12 (Wed)
ブラームスを聴く・・・・・『交響曲 第1番』
暑い時は聴く気も起こらないが、冷え込む季節になると何故かブラームスのオーケストラ曲が聴きたくなる。何故、暑い時に聴く気が起こらないかというと、ブラームスのオーケストラ曲は明るさがなく、曲調も重く、聴くとよけいに暑苦しくなってしまうのだ。でも、11月の下旬あたりぐらいになると、あの重苦しいブラームスのオーケストラ曲が恋しくなる。なかでも交響曲、ピアノ協奏曲なんていうのは重厚で、渋い曲が多く、ドヴォルザークやチャイコフスキーといった同時代の作曲家の交響曲と比較してもメロディアスではなく、取っ付き難いかもしれない。しかし私は、そんなブラームスの交響曲を、寒い季節になるとよく聴くのである。
ブラームスには4曲の交響曲があるが、どれも出来栄えは甲乙付けがたい。でも、その中で1曲だけを選べと言われれば、おそらく交響曲1番をとるだろう。
ブラームスの交響曲1番は、ブラームスが43歳の時に完成した。つまり年齢が高くなってから完成した曲である。ところが、ブラームスは交響曲1番を着想したのは22歳の頃だったといわれる。だから、着想から完成まで、実に21年もかかっていることになる。それなら、何故にブラームスが最初の交響曲を完成させるのに21年も要したかということになるが、おそらくベートーヴェンの何れも優れた9つの交響曲がブラームスの頭の中にあったのだと思う。それで、最初の交響曲を完成させるのにも慎重を期し、何度も手直しを加えたのであろう。その結果、完成されたのが、交響曲第1番 ハ短調 作品68である。
この曲は全4楽章で、冒頭からティンパニーが一定の緩いリズムを刻むと共に、ヴァイオリンと木管が高音域を奏でる。そして、序奏の後半になるとピッチカートとなり、40小節から第一主題に入る。第2楽章、第3楽章は緩い楽章で、3楽章にはコンサートマスターのソロ・ヴァイオリンが聴かれる。第4楽章は非常に重い緩やかな序奏で始まり、これが61小節続く。そして、ここから暗から明へ、かつてハンス・フォン・ビューローがベートーヴェンの交響曲第10番と形容しただけあつて、ベートーヴェンの歓喜の歌に似た旋律が奏でられる。この曲のクライマックスは第4楽章にあり、聴かせどころが随所に散りばめてある。
この交響曲を初めて聴くと、重低音が耳に残るし旋律が明確でなく、馴染めないかもしれない。だが私は、この曲を全ての交響曲の中で、最も聴いているであろう。最初に聴いたのは、高校生の頃だったかもしれない。指揮者は誰でオーケストラは何処だったか覚えてない。最初の印象は、つまらないというものだった。それが、何時だったかカール・ベーム指揮、ウィーン・フィルによるテープを繰り返し聴いている間に、何故かはまってしまった。癖になったというのだろうか、この曲をよく聴くようになっていた。その後、CD時代になり、ブラームスの交響曲第1番のCDを何枚か買い求めた。それで、現在、私の手元にブラームスの交響曲第1番のCDが10枚ある。
●アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 NBC交響楽団(1940年録音)
●ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1952年録音)
●シャルル・ミュンシュ指揮 ボストン交響楽団(1956年録音)
●ブルーノ・ワルター指揮 コロンビア交響楽団(1960年録音)
●シャルル・ミュンシュ指揮 パリ管弦楽団(1968年録音)
●カール・ベーム指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1975年録音)
●レナード・バーンスタイン指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1981年録音)
●ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1983年録音)
●リッカルド・シャイー指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(1987年録音)
●朝比奈隆指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団(1994年録音)
トスカニーニ、フルトヴェングラーという大巨匠のモノラル録音から、バーンスタイン、カラヤン、シャイー、朝比奈、という最新のデジタル録音まであるが、この中でどれが好きだといわれると、甲乙付けがたい。丁寧なワルター、ベーム指揮の演奏も良いし、カラヤンの恰好いい演奏も捨てがたいし、バーンスタインもメリハリがある。そんな名演ぞろいの中で、好みから言ってフルトヴェングラーの緩急つけた演奏。特に第4楽章後半のたたみかけるような演奏は熱演といえるものであるが、そのフルトヴェングラーの演奏をさらに近代化したのが、シャルル・ミュンシュ指揮、パリ管弦楽団の演奏のCDではないかと思う。
とにかくゆったりとした始まりから、徐々に盛り上がっていき、第4楽章の後半へクライマックスを持っていく。緩いテンポから終盤は殺気立ってくるように楽器が唸っている。面白いことにスコアーを見ながら聴いていると、終楽章の360小節、362小節、363小節とスコアに書き込まれてない筈のティンパニーが鳴らされている。また414小節には弦楽器がトレモロ(弦を小刻みに演奏する) になっている。これなんかはミュンシュ独自の解釈であろう。まさに白熱の演奏で、ブラームスの1番を聴くときは、最も多くミュンシュ、パリ管のCDを聴いてしまうのである。
さあ、これから初冬の長い夜、ブラームスの交響曲1番を、また聴くとしよう・・・・。
ブラームス 交響曲第1番 第4楽章62小節目から カラヤン指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1959年の日本公演から)
ブラームス 交響曲第1番 第4楽章後半を演奏するカラヤン(指揮)とウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
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