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2008.03.17 (Mon)

チベット暴動に思う

 数日前、中国の西域にあるチベット自治区の区都ラサで、大規模な暴動が起きた。これにより中国共産党の軍事部門である人民解放軍が暴動鎮圧に乗り出し、暴動に関与した人物を探し出し連行するという。ラサ市内は直ちに戒厳令が布かれ、人民解放軍や武装警察部隊が発動し、200台以上の人民解放軍車両が封鎖地区に入り、暴動に関与した人物を一軒一軒調べて回り、チベット民族は外出しないように警告され、すべて身元を確認された上、怪しき人物は逮捕され、連行されラサ郊外の複数の監獄に収容されるという。

 あー、何と切ないことか・・・。中国はまたも同じやり方で、暴動を弾圧してしまうのか・・・。思い出すのは1989年の6月。民主化を求める人民の大規模な運動が中国で拡がった。でも結局は、中国共産党の人民解放軍によって武力弾圧されてしまった。本当に中国共産党政府のやり方は、昔から一つも変わってない。一党独裁による悪い面ばかりが出てしまって、社会主義国家の理想とする精神とはおよそほど遠い。何故にいつもこうなんだろうか・・・・・。

 そういえば、現中国の国家主席である胡錦濤(こきんとう)は、かつてチベット自治区の共産党書記であった。1989年1月にチベット自治区の共産党書記に就任すると、2ヶ月後の3月7日には、ラサ市内に戒厳令を布告している。これは昔から独立を求めているチベット民族の運動を弾圧するためで、その頃は、特に独立運動が激しかったのである。この時、胡錦濤はチベット人の虐殺を行ったとされる。それから3ヶ月後には例の天安門事件である。民主化要請の人民に対し、中国政府は武力行使に出て死者も多数出たものであるが、この時、チベットのラサにおいて胡錦濤は、民主化運動のチベットへの波及を防御するためラサを戒厳令下に置いたのである。それで胡錦濤は、チベット自治区の最高責任者として4年間君臨し、中国共産党の中央政府の信頼を勝ち得、2003年3月、とうとう江沢民の後任として中華人民共和国共産党政府の国家主席に就任するのである。

 そもそもチベットという所は、中国の西域にあり、住民の大部分がチベット人なのである。この広大な高原にある自治区全体でも人口は少なく270万人。その約93%はチベット人だという。中国全土では漢民族が94%占めるのとは、大きく違っている。またチベット仏教を信仰している人も多く、ダライ・ラマ14世を師と仰ぐ人も相当数いるのだ。

 チベット自治区は、満州民族が支配していた清の時代から、独立意識が強く、1911年の辛亥革命により、清王朝が崩壊し、1913年にはダライ・ラマ13世がチベット独立宣言をしたものである。それが1933年、ダライ・ラマ13世の死去。1940年ダライ・ラマ14世が即位することとなる。でも1949年、毛沢東による中華人民共和国の建国。これにより中国共産党の人民解放軍がチベット東部を占領、1951年にはラサまで進駐してしまう。チベット民族は黙っておらず、1956年にチベット動乱が始まりだす。ところが、1959年にダライ・ラマ14世は亡命することとなる。それ以来、ダライ・ラマはチベットの地を踏むことも無く、今日まで来ているのだが、胡錦濤は何をチベットに求めているのだろうか。

 中国にとって少数民族の独立運動はやっかいなことなのかもしれないが、中国の当局は独立運動による国家分裂に反対し、安定を維持する人民戦争を発動すると表明し、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世を名指しで非難したのである。かつて大量の資金を投入して、経済発展で民族緩和を図ろうとした中国中央政府の思惑が外れ、他の少数民族にまで独立運動が飛び火する懸念が出てきたのである。

 結局、多民族国家でありながら、漢民族支配により蔑ろにされる少数民族。それに対し中国政府は強力な経済発展により、資金援助で民族間対立を緩和しようと試みたが、所詮、分裂主義と非難する中国政府の庇護の下で経済的利益を上げるのは漢民族の資本家ばかりで、貧困層の多いチベット民族からすると漢民族支配は憎悪の対象でしかない。

 中国は北京オリンピック開催のため、色々と露呈した問題を血眼になって一掃しようと必至であるが、既に漢民族でさえ、農村部を中心に貧困層から不満が続出しているという。そもそも社会主義国家というのは、まず第一に人民の生活安定を考えるべきであるのに、無理にオリンピックを開こうと躍起になっている。国民なきオリンピックなんて開催する意味があるだろうか・・・・。チベット民族の大暴動が今の中国の闇の部分を現していると思う。何も中国が抱える問題は、毒入りギョーザだけではないようだ。毛沢東時代の文化大革命の頃から、中国共産党の悪しき姿勢は40年以上経っても何ら変わってないのだ。この調子だと、中国が真の民主国家になりえるのは、はるか未来の事のように思えてならない。

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