2008.04.07 (Mon)
チャールトン・ヘストン死去
チャールトン・ヘストンが亡くなった。84歳だった。その昔、私が子供の頃、京都高島屋の裏にあった映画館のワイドスクリーンで観た『ベン・ハー』を忘れない。その時は、役者の名前も知らず、ただ偉丈夫で頑健な体つきをしていた主人公のベン・ハーに畏敬の念を持っていた。また『十戒』でモーゼに扮していた彼にも、超人的な人物像を思い描いていた。また、それ以外だと『華麗なる激情』のミケランジェロ、『エル・シド』のエル・シド、『ジュリアス・シーザー』のアントニウス、『偉大な生涯の物語』のヨハネ・・・・・・・・・・。このようにチャールトン・ヘストンの演じた役というのは、歴史的な偉人、超人、英雄といったものが多く、私の少年時代にある彼は、人間離れしたスーパースターであった。
これはチャールトン・ヘストンが、ウィリアム・ワイラー、セシル・B・デミル、キャルロ・リードといった巨匠といわれる監督に気に入られたからでもあるのだが、いわば強いアメリカの代名詞的な役者であったから、こういった役柄が回ってきたものと思える。
チャールトン・ヘストンというのは、アメリカ全盛期の1950年代に役者として頂点に登りつめた。第二次世界大戦では爆撃機に搭乗し、戦後は役者として銀幕に登場するようになる。セシル・B・デミル監督の大作『地上最大のショウ』(1952年)に出演し、その時の演技を認められ、次の同監督作品『十戒』(1956年)でモーゼの役に挑戦し、チャールトン・ヘストンの名を高めることとなる。そして、映画史に残る歴史大作『ベン・ハー』(1959年)で、数奇な運命を辿るユダヤ人青年ジュダ=ベン・ハーを見事に演じて、チャールトン・ヘストンは、強いアメリカを代表する一流俳優として名を轟かせることになる。だからチャールトン・ヘストンは、堂々たる立派な体格と、如何にもアングロ・サクソン系の顔立ちで、保守的なアメリカ人から支持を受けたのだろう。役柄は常にヒーローであり、この頃の彼には性格的な役やひ弱な役、性格の曲がった役、病的な役とは無縁で、絶えず英雄、超人、偉人に扮し、常にハリウッドの最前列に立つ本格的役者であった。
それが突然、チャールトン・ヘストンが『猿の惑星』という奇妙な映画に出演してきた時は驚いたものである。それは今までの固定概念を崩すものであり、彼としては汚れ役に近かったであろう。でも、当時の私は、チャールトン・ヘストンに対しては超人的な人間像を持っていて、それが『猿の惑星』により見事に崩され、この時から彼を等身大の人間として見るようになったものである。そして、これ以降のチャールトン・ヘストンは過去のように、英雄的な役をあまり演じなくなった。それは何故だか解らないが、アメリカという国の在りかたが変化してきたからだろうと思う。
チャールトン・ヘストンが『十戒』『ベン・ハー』に出ていた頃は、繁栄の象徴のアメリカという国だった。それが繁栄を謳歌していた時代から崩れ去り、アメリカが腐敗しきった現実を世界に曝け出した1960年代・・・・公民権運動に参加していたチャールトン・ヘストンがいる。彼は実像とは違うリベラルな一面を持っていたのである。当時の強いアメリカの顔的チャールトン・ヘストンであるが、現実では人種差別に反対する革新派であったかもしれないのだ。・・・それともアメリカの悩める問題に眼を背けられなくなり、デモに参加してみたりしている間に、それまでの英雄的役柄を演じるのが馬鹿らしくなったのかもしれない。でもよく考えてみると、チャールトン・ヘストン以前から存在する強いアメリカを代表する役者はジョン・ウェインであった。
ジョン・ウェインは西部劇に数多く出演し、ヒーローを演じてきた強いアメリカを代表する俳優である。でも保守的思想を持ち、アメリカ愛国者でもあった。一方、チャールトン・ヘストンは役柄とは違ってリベラルな面を持っていたという。だからチャールトン・ヘストンが、1990年代になって保守的なアメリカ人として、「全米ライフル協会」の会長に就任した時は驚いたものである。いったいチャールトン・ヘストンは保守派なのかリベラル派のか?
若い頃はリベラルで、年齢を重ねて保守派に寝返ったのか・・・・・。何年か前に、アメリカのコロラド州コロンバイン高校で起こった銃乱射事件に関するドキュメンタリー映画を撮ったマイケル・ムーア監督のインタビューに答えたチャールトン・ヘストンが、立場上もあるが銃規制に対して反対の意を示していたのには呆れてしまった。結局、チャールトン・ヘストンは2002年の夏、自らアルツハイマー病に罹っていることを公表し、全米ライフル協会会長を辞任したが、チャールトン・ヘストンの真実はリベラル派なのか保守派なのか、解らずじまいである。
若い頃、ヒーローを演じ、年齢を重ねてからは役柄も変わってきたが、実生活ではリベラル派から保守的に変わっていったとしたら、これほど滑稽なことはない。やはり役者はスクリーン上でヒーローであっても、所詮は一般の人と同じ、ただの人間なんだということなんだろうか・・・・。
映画『十戒』のTrailer
映画『ベン・ハー』のチャリオット・レース
これはチャールトン・ヘストンが、ウィリアム・ワイラー、セシル・B・デミル、キャルロ・リードといった巨匠といわれる監督に気に入られたからでもあるのだが、いわば強いアメリカの代名詞的な役者であったから、こういった役柄が回ってきたものと思える。
チャールトン・ヘストンというのは、アメリカ全盛期の1950年代に役者として頂点に登りつめた。第二次世界大戦では爆撃機に搭乗し、戦後は役者として銀幕に登場するようになる。セシル・B・デミル監督の大作『地上最大のショウ』(1952年)に出演し、その時の演技を認められ、次の同監督作品『十戒』(1956年)でモーゼの役に挑戦し、チャールトン・ヘストンの名を高めることとなる。そして、映画史に残る歴史大作『ベン・ハー』(1959年)で、数奇な運命を辿るユダヤ人青年ジュダ=ベン・ハーを見事に演じて、チャールトン・ヘストンは、強いアメリカを代表する一流俳優として名を轟かせることになる。だからチャールトン・ヘストンは、堂々たる立派な体格と、如何にもアングロ・サクソン系の顔立ちで、保守的なアメリカ人から支持を受けたのだろう。役柄は常にヒーローであり、この頃の彼には性格的な役やひ弱な役、性格の曲がった役、病的な役とは無縁で、絶えず英雄、超人、偉人に扮し、常にハリウッドの最前列に立つ本格的役者であった。
それが突然、チャールトン・ヘストンが『猿の惑星』という奇妙な映画に出演してきた時は驚いたものである。それは今までの固定概念を崩すものであり、彼としては汚れ役に近かったであろう。でも、当時の私は、チャールトン・ヘストンに対しては超人的な人間像を持っていて、それが『猿の惑星』により見事に崩され、この時から彼を等身大の人間として見るようになったものである。そして、これ以降のチャールトン・ヘストンは過去のように、英雄的な役をあまり演じなくなった。それは何故だか解らないが、アメリカという国の在りかたが変化してきたからだろうと思う。
チャールトン・ヘストンが『十戒』『ベン・ハー』に出ていた頃は、繁栄の象徴のアメリカという国だった。それが繁栄を謳歌していた時代から崩れ去り、アメリカが腐敗しきった現実を世界に曝け出した1960年代・・・・公民権運動に参加していたチャールトン・ヘストンがいる。彼は実像とは違うリベラルな一面を持っていたのである。当時の強いアメリカの顔的チャールトン・ヘストンであるが、現実では人種差別に反対する革新派であったかもしれないのだ。・・・それともアメリカの悩める問題に眼を背けられなくなり、デモに参加してみたりしている間に、それまでの英雄的役柄を演じるのが馬鹿らしくなったのかもしれない。でもよく考えてみると、チャールトン・ヘストン以前から存在する強いアメリカを代表する役者はジョン・ウェインであった。
ジョン・ウェインは西部劇に数多く出演し、ヒーローを演じてきた強いアメリカを代表する俳優である。でも保守的思想を持ち、アメリカ愛国者でもあった。一方、チャールトン・ヘストンは役柄とは違ってリベラルな面を持っていたという。だからチャールトン・ヘストンが、1990年代になって保守的なアメリカ人として、「全米ライフル協会」の会長に就任した時は驚いたものである。いったいチャールトン・ヘストンは保守派なのかリベラル派のか?
若い頃はリベラルで、年齢を重ねて保守派に寝返ったのか・・・・・。何年か前に、アメリカのコロラド州コロンバイン高校で起こった銃乱射事件に関するドキュメンタリー映画を撮ったマイケル・ムーア監督のインタビューに答えたチャールトン・ヘストンが、立場上もあるが銃規制に対して反対の意を示していたのには呆れてしまった。結局、チャールトン・ヘストンは2002年の夏、自らアルツハイマー病に罹っていることを公表し、全米ライフル協会会長を辞任したが、チャールトン・ヘストンの真実はリベラル派なのか保守派なのか、解らずじまいである。
若い頃、ヒーローを演じ、年齢を重ねてからは役柄も変わってきたが、実生活ではリベラル派から保守的に変わっていったとしたら、これほど滑稽なことはない。やはり役者はスクリーン上でヒーローであっても、所詮は一般の人と同じ、ただの人間なんだということなんだろうか・・・・。
映画『十戒』のTrailer
映画『ベン・ハー』のチャリオット・レース
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