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2008.04.22 (Tue)

アナトール・フランス『神々は渇く』を読む

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 1789年7月19日のバスティーユ牢獄の襲撃に端を発するフランス革命。これはヨーロッパそのものの社会を大きく揺るがす変革期であった。・・・・・・このアナトール・フランスが書いた『神々は渇く』は、フランス革命を通して純真な若者が、断罪する側から最後に、断罪される立場となり死んでいくという話である。

 時はフランス革命後、パリの市内ではジャコバン党の恐怖政治が続いていた。大画家ダヴィットの弟子であるエヴァリスト・ガムランは、純真で一途な青年画家だった。ガムランはセーヌ川に近い古いアパートに母と2人で住んでいた。でも古臭い彼の絵はさっぱり売れず、母子は毎日の食事も事欠いていた。フランス愛国者のガムランは、共和制の将来に期待しすぎるあまり、ロベスピエールやマラーを支持し、地区委員会に積極的に参加するのであった。一方、ガムランを密かに愛している版画商の娘エロディは、彼とどうにか恋愛関係を結ぶのに成功した。ところがマラーが暗殺され、ロベスピエールが台頭する。

 やがて熱狂的な革命家になっていたガムランは、革命裁判の陪審員に任命され、共和国を守るには恐怖政治が必要であると信じていて、革命に反対する分子を次から次へと断頭台へ送っていた。実の妹ジュリーの愛人も、同じ建物内に住み、懐疑派で元貴族のブロトも、情け容赦なく断頭台へ送るのであった。しかし、何時までもその体制が続く筈はなかった。1794年テルミドールの反動により、ロベスピエールが失脚する。ロベスピエールを熱烈に支持していたガムランも遂に逮捕され、今度は自らが断頭台にかけられてしまう。かつて恋愛関係にあったエロディは、ガムランの死後、ガムランの友人で反動派の画家を恋人にして幸せに暮らす・・・・・・・・。

 いわゆるフランス革命の真っ只中の話である。当時のアンシャン・レジームといわれる絶対君主の支配による社会体制からの反発により、第三身分といわれる平民が中心になって起こったフランス革命。革命はなされたが、その後に起こるジャコバン党の恐怖政治。その中心人物がロベスピエールであり、そのロベスピエールを熱狂的に支持していたガムランが、やがて対立する穏健派によって政権を掌握されることにより、処刑されるということである。

 この小説を読んで思うことがある。ガムランは非情で冷酷で、革命闘士といったタイプに感じるが、物語の始まりの頃は、「ミネルヴァの顔立ちに似た、峻厳でかつ女性的な美しさ」を備えていた。でもその端麗な容姿を鼻にかけたりもせず、自分が美しいことにも気づかず、エロディに誘われるまで女を知らなかったという初心な少年であった。それが基本的に正義を愛し、祖国愛に燃え、純朴で一途な思い込みから、祖国を裏切る腐敗階級に対して牙を剥いてしまうまでになるのだった。真摯で純粋すぎるが故、ゆとりのない偏狭な精神の持ち主に変ってしまったのである。革命が進行するにつけ、ガムランは端麗な外見から、表情も険しくなり、「陰鬱な眼差しと蒼白い頬は憂鬱なそして激しい精神を物語る」ようになってしまうのだった。革命が進むにつれ、温厚な人間の風貌が変わっていく様を如実に表した内容が書かれていたが、革命っていったい何なんだろうと思ってしまう。

 君臨する帝政を打倒し自らが権力行使の座についても、結局は同じことである。自由平等の社会を築くためにといった大義名分はあったものの、いったん自ら政権を握ってしまうと同様の帝政を布いてしまう。まさに人間の歴史は過ちの繰り返しかもしれないと思ってしまう。自由平等の社会なんて、所詮は夢物語なのだろうか・・・・・・。

 マルクス・レーニン主義から100年以上経つ・・・・・・・スターリン、毛沢東、金日成、チャウ/シェスク、ポル・ポト、カダフィ、アミン、マルコス、フセイン・・・・・・・戦後の実権者は、どれもこれも・・・・・もう、たくさんだ。
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