2009.11.23 (Mon)
ソニー・ロリンズのアルバム『サキソフォン・コロッサス』を聴く
ジャズの名盤というといくつかあるだろうが、このソニー・ロリンズというサックス奏者が中心となって録音された『サキソフォン・コロッサス』も名盤中の名盤に入ると思う。収録曲は『セント・トーマス』『ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ』『ストロード・ロード』『モリタート』『ブルー・セヴン』の5曲だが、どの曲も出来が良くてモダン・ジャズの真髄がここに集約されているといっても過言ではない。このアルバムを初めて聴いたのは学生の頃だったと思う。当時の仲間に何故かジャズばかり聴いている奴がいて、彼の家へ遊びに言った時、ポータブルのプレイヤーで、このアルバムを聴いていたのでよく覚えている。中でも4曲目の『モリタート』でソニー・ロリンズが奏でるテナー・サックスに2人で聴き惚れていたものだ。メンバーはソニー・ロリンズ(テナー・サックス)、トミー・フラナガン(ピアノ)、ダグ・ワトキンス(ベース)、マックス・ローチ(ドラムス)である。あの頃、サックス奏者といえばジョン・コルトレーンばかりを聴いていたが、このアルバムを聴いてからソニー・ロリンズの存在を知ったというと笑われるかもしれないが、ある意味においては、それだけ衝撃の多いアルバムであったということになるだろう。
このアルバムはソニー・ロリンズが25歳の時、雲隠れすることで有名な彼が最初の雲隠れから姿を現して録音されたものである。1955年11月、クリフォード・ブラウン=マックス・ローチ・クインテットの演奏を聴き、特にブラウンの演奏に魅了されて隠遁生活から抜け出し、そのクインテットに加わったという。そんな頃に『サキソフォン・コロナックス』(1956年6月22日録音)は吹き込まれ、ソニー・ロリンズ゙の即興演奏が冴え渡るのである。殊にドラムスのマックス・ローチとソニー・ロリンズの兼ね合いが素晴らしく何度聴いても飽きないアルバムである。
1曲目の『セント・トーマス』はマックス・ローチのドラムソロで始まってソニー・ロリンズのテナー・サックスが加わりお互いが軽快にアドリブで掛け合う。『ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ』はソニー・ロリンズの怪しげなテナー・サックスのむせび泣きから始まり、ドラムスとベースがスローながら一定のリズムを刻み、そこへテナー・サックスのアドリブ、トミー・フラナガンのピアノのアドリブが聴かれる。『ストロード・ロード』はアップテンポのリズミカルな曲であるが、4人の個性が微妙にぶつかり合い、これぞモダン・ジャズの魅力満載といったような曲である。4曲目の『モリタート』はロリンズのテナーから始まり何度となく同じフレーズが繰り返され、やがてアドリブへと展開して行く。さらに、そこからピアノ・ソロへと移り、ベースとドラムスのリズムに応えるように軽快な演奏が続き、再びテナー・サックスが加わり、その後にドラムスのマックス・ローチのアドリブが冴え渡り、ベースのダグ・ワトキンスと兼ねあいながら、最後に再びテナー・サックスが冒頭のフレーズを演奏して集結する。『ブルー・セヴン』はベース低音から始まり、ドラムスが加わり、テナーが軽く撫ぜるようにメロディーを奏でていく。曲全体としてはベースとドラムスの一定の拍子を刻み、ピアノとテナーが自由に演奏している感があるがドラムスのソロも秀抜で、各自の個性が生きている曲である。アルバム全体としてもバランスが取れていて、何度聴いてもモダン・ジャズのお手本のような演奏が詰め込まれているようで聴き飽きない。やはり名盤であることに偽りはない。
ところでソニー・ロリンズであるが、彼は1930年にニューヨークで生まれた。9歳でピアノを学びだし、11歳の時にアルト・サックスを吹き出し、高校に入ってからテナー・サックスに転向、そして19歳でプロとしてレコーディングをするなど若くして才能が認められていた。この頃にバド・パウエル、マイルス・デイヴィスと共演。さらにソニー・ロリンズが憧れていたチャーリー・パーカーとも共演するようになる。その後もジョン・コルトレーン、コールマン・ホーキンス等と共演。また1986年には『テナー・サックスとオーケストラのための協奏曲』を作曲し、クラシックとジャズの融合を試みるなど絶えず新しいことに挑戦し続ける姿勢は立派であり、齢79歳のソニー・ロリンズは今でも現役である。
『セント・トーマス』の演奏でテナーを吹くソニー・ロリンズ。
ところで関西に【あきはみさきBAND】というスーパー女子高生ジャズ奏者がいることをご存知だろうか。2人が『セント・トーマス』を演奏していた映像を見つけたので、ついでにYou Tubeの映像から抜粋することにした。中島あきは(アルト・サックス)は和歌山の高校2年生。中道みさき(ドラムス)は大阪の高校1年生である。2人とも高校にはジャズバンドがないので、大人の奏者を加えてコンボのバンドを組み、演奏活動を繰り広げている。まだ荒削りなところもあるが、将来が楽しみな2人である。
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