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2009.12.23 (Wed)

ヴィオッティ・・・・・『ヴァイオリン協奏曲第22番』を聴く

 サルヴァトーレ・アッカルド(ヴァイオリン)
 エリオ・ボンコンパーニ指揮
 ローマ・フィルハーモニー管弦楽団
s-P1000084.jpg

 このタイトルを見てヴィオッティって誰だ? と思われる向きもあるかな。確かにあまり知られてない作曲家である。でもヴァイオリン・ソナタ18曲、ヴァイオリン協奏曲29曲、弦楽四重奏曲21曲、弦楽三重奏曲21曲も残している作曲家で通には知られている。

 ジョヴァンニ・バティスタ・ヴィオッティは1755年に生まれ、1824年に亡くなっていて名前で判ると思うがイタリアの人で、時代的にはモーツァルト、ベートーヴェンとドン時代の人である。もっとも、この22番のヴァイオリン協奏曲が突出して演奏されることが多く、その他だと23番ヴァイオリン協奏曲とイ長調の2つのフルートのための協奏曲あたりが知られているぐらいの作曲家である。とはいえ、この温かみのある22番のヴァイオリン協奏曲を聴くとホッとする。

 ヴィオッティは、多くのヴァイオリン作りの名手を産んだイタリアの人だからヴァイオリンの作品が多いと思ったのだが、実はヴィオッティ自身がヴァイオリン演奏史上に残る名手といわれているのだ。ヴァイオリン弾きの名手というとすぐにパガニーニが思い出されるが、ヴィオッティはパガニーニより先輩である。それどころか近代以降のヴァイオリン演奏の流派の多くが彼から端を発しているのだ。それはどういうことかというと、彼の弟子にロード、ベイヨー、クロイツェル(ベートーヴェンの曲で有名)がいて、その3人の門から数多くの優れたヴァイオリン奏者が出ているということだ。

 ロードからはヴュータン、ヨアヒム、ドント、イザイ、フーバイ。ベイヨーからはアラール、レオナルド、サラサーテ。クロイツェルからはヴィエニアフスキー、クライスラーが出ている。このようにヴァイオリン演奏史に残る演奏家を生み出した一大潮流の源流がヴィオッティである。つまりヴァイオリン演奏の基本的な解釈をもった作風がヴィオッティの曲には見られるということになる。パガニーニの作品にあるような超絶技巧は必要ではなく、飽く迄も南欧イタリアの温かみのある歌うような作品が多い。

 全3楽章で第1楽章が特に長く、この楽章だけで15分ぐらいの演奏時間がある。旋律はイタリアの古典美と称され、その昔、ラジオ放送のコンサート・アワーのテーマ音楽に使われたことがある。でも私が好きなのは、どちらかというと第2楽章の方で、こちらもNHK・FMのクラシック音楽の番組の冒頭にいつも流れていたことがある。これも20年以上前のことであり、何かとヴィオッティのこの曲は音楽番組に使われていたのだが、最近はだんだんと忘れ去られていっているのではないかと思える。曲の方もあまり演奏される機会もなく、ヴィオッティという名前も今ではヴィオッティ国際音楽コンクール(イタリア、ヴェルチェリで開催)に名を留めるのみという寂しさはあるもの、この22番を残しているだけで充分である。それだけに、この曲を聴くと何故かほのぼのとした暖かさが感じられるのだが。


 ヴィオッティ ヴァイオリン協奏曲第22番イ短調~第1楽章の演奏(音声のみ)
 ヴァイオリンはイツァーク・パールマン

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