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2008.05.17 (Sat)

シルヴィー・ヴァルタンを聴く

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 私が小学生の頃だったが、姉が聴いていたレコードの中で愛らしい声で印象深い曲がある。それは姉がよく聴いていた英語のポップスではなく、英語以外の言葉で歌われていた。私は、まだ英語もかじってない小学生であったが、英語とそれ以外の言語の区別ぐらいは、その頃でもついていた。それで誰が歌っているのかと姉に訪ねるとフランスの曲だという。その曲はシルヴィ・ヴァルタンが歌う『アイドルを探せ』だった。

 1963年のフランス映画の主題歌で歌っているシルヴィー・ヴァルタンが主演した映画であるという。姉はこの映画を観たのだろうか、18歳のシルヴィー・ヴァルタンの愛くるしい笑顔と共に曲の方もヒットしたのだった。確かに当時のレコード・ジャケットのシルヴィー・ヴァルタンは愛くるしい顔をしていて、まさにアイドルであっただろう。

 シルヴィー・ヴァルタンというとフランスのシャンソン・イエ・イエ(新しいシャンソン)といわれる歌手であるが、日本ではたいへんな人気があった。だから小学生の私でも曲を覚えているのであって、いわゆる本格的なシャンソンとは一線を画していて、どちらかというとフレンチ・ポップスと呼ばれるジャンルに属するものではないだろうか。だから英語圏の曲もよくカバーしていたように思う。

 彼女は1944年にブルガリアで生まれている。だから純粋のフランス人ではないといいたいが、フランス人というものは人種が入り交ざって形成されている。でも基本的にはラテン人でゲルマン人やケルト人といった北方の民族を祖先に持つ人も含まれていて、フランス民族といったものはない。だから純粋のフランス人ではないという言い方もおかしいが、フランス人の父とハンガリー人の母との間に生まれたブルガリア出身のフランスの歌手であるというから随分とややこしい。そして、彼女が10歳の時一家そろってパリに移住し、16歳でレコーディングしてデビューしている。

 こうして歌手になったシルヴィー・ヴァルタンは、『アイドルを探せ』で一躍人気が出て、映画の通りアイドルとなるが、その映画で共演した男性歌手ジョニー・アリディと結婚するも離婚。そして夫婦で自殺未遂事件を起こしてしまう。さらに離婚後、シルヴィー・ヴァルタンは交通事故に数回見舞われ、再起不能とまでいわれたことを思い出す。でも1968年、突如として『あなたのとりこ』という曲でカムバックする。

 でもこの時のシルヴィー・ヴァルタンは『アイドルを探せ』を歌っていたときとは何もかも雰囲気が違っていて、可愛さよりも大人の女の雰囲気が漂っていて、私は違和感を覚えずにはいられなかった。その後は『悲しみの兵士』等のヒットもあり、またモーツァルトの交響曲40番のメロディにフランス語の歌詞をつけた『悲しみのシンフォニー』や、アメリカン・ポップスのカバー等もやっていた。

 最近はシルヴィー・ヴァルタンの『あなたのとりこ』が映画『ウォーターボーイズ』やCMで使われたりして、知っている若者も多いという。でも18歳で歌っていたシルヴィー・ヴァルタンも今や60歳を越えている。40年以上の時を経て、シルヴィー・ヴァルタンの容姿もすっかり変わってしまった。本当に時間の経過というものは残酷である。

 『アイドルを探せ』を歌うシルヴィー・ヴァルタン


 『あなたのとりこ』を歌うシルヴィー・ヴァルタン

 
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