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2007.10.23 (Tue)

古典文学を読む・・・・・『ガリヴァー旅行記』

ジョナサン・スウィフトの『ガリヴァー旅行記』
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 『ガリヴァー旅行記』というと、児童文学作品ではないかと思われるかもしれないなあ。確かに子供の頃に読んだ『ガリバー旅行記』・・・・ガリバーが小人の国に行ったり巨人の国に行ったりする話は、何処かメルヘンチックであった。でも子供の頃に読んだ童話の『ガリバー旅行記』はここで終わっている。ここまでだと読んだ限りは、子供向けの児童文学ではないだろうかと考えるのが普通である。

 こんな『ガリバー旅行記』が、実のところイギリス文学史上に残る風刺文学の傑作と言われているのをご存知であろうか・・・・。『ガリバー旅行記』というのは、日本では中野好夫の訳で全編読むことが出来るが、それはそれは内容が、世の中の森羅万象、人間の欺瞞、学界の腐敗、官僚、政治家を詳細に皮肉った批判の嵐である。ガリバーというのはある意味で、作者ジョナサン・スウィフトの分身といわれ、牧師の立場から文壇、政界の人間と親しくなり、有力な政治的代弁者としてペンの闘士になったとされる。言わば、斜に構えて物事を眺め、観察し、洞察し、鋭い批判精神を身につけたものと思われる。このようなスウィフトだから、一般社会にまで批判精神が及び、それはまたイギリス社会だけに留まらず、古今東西に通じる普遍性を持っているから読んでいて頷けるのだ。

 こんな『ガリバー旅行記』であるが、ガリバーが巨人の国に行った後の事は、童話の世界では書かれていないので、簡単に補足しておこうと思う。

 巨人の国の話から後、ガリバーはある島を発見して上陸する。その島は飛ぶ島でラピュータと呼ばれていた。そこの住民は抽象的な思念にふけり、空想的な連中ばかりである。彼等はあちらこちらへ出かけ、日本にも立ち寄る。さらにラグナックという国ではストラルドブラグと呼ばれる不死の人々に会い、いくら死のうと思ってもそれを許されない奇怪な哀れむべき姿を見て、たいへん驚く。

 ガリバー最後の旅は、フウイヌム渡航記で、そこの住民たちは外見こそ馬に似ているが、みんな高い知能と自制と礼節を有し、極めて素晴らしく美しい存在であった。ヤフーと呼ばれる人間そっくりの生き物から、人間に対する激しい憎悪の念を吹き込まれ、そのためにガリバーは故郷に帰っても、我が家の家族さえ見るに堪えられず、唯一つのくつろぎは馬小屋にいる時だけという有様であった。

 以上、簡単ではあるが『ガリバー旅行記』のあらすじである。こんな内容だから、児童文学というのには質が高すぎて、とても理解できるような代物ではない。

 ところで、『ガリバー旅行記』を読んでいて、笑い転げた部分がある。翻訳原文のまま紹介するとしよう・・・・・・・・・・・・・いま一人の教授はまた、反政府陰謀検挙心得書という大きな書類を見せてくれた。彼は政治家諸氏に忠告しているのだ。すなわち怪しいと思える人間がいれば、次には食事の時間、また彼らがどちら側を下にして寝るか、どちらの手で手を拭くか、それからまた排泄物を厳重に検査する、そしてその色合、匂、味、濃度消化の良否といったものから、彼らの思想計画を判断せよ、なんとなれば人間というものは、その上厠せる時ほど真剣に、いちずに物を考える時はないからだ、これは彼自身再三の実験によって発見したものであるという、すなわちそうした上厠時に、むろん、ほんの実験のためだが、どうすれば最も巧く国王しい逆が出来るかということを考えてみたところが、その糞便は常に緑色を帯びていた。ところがただ単に内乱を起すとか、首都を焼くかといった程度の考えでは、全然そうした変化は起らなかったと、というのであるる・・・・・・・・・・・・・・・・・・何とも物騒な風刺であるが、国王の命を狙っている奴は緑色の糞便をしていて、内乱程度では糞便の変化が起こらなかったと書いているのである。このように『ガリバー旅行記』は、こういった調子で、最初から最後まで批判、皮肉、風刺の連続である。ある意味、児童文化的な小人の国、巨人の国の話から、後半、物語がより荒唐無稽へと展開していくが、風刺色はより強くなり昇華していくのである。すでに『ガリバー旅行記』を子供の頃に呼んだ覚えがあり、小人の国、巨人の国までの話ししか知らない人は、後半こそが『ガリバー旅行記』の真髄であることをお忘れなく。出来れば、面倒くさいが読んでもらいたいと思う。
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